ウガンダ南スーダン難民心理社会的支援が終了しました!

SDGs・プロミス・ジャパン(SPJ)ではジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成金を受け、6/11~9/25の間ウガンダ北部ビディビディ難民居住区において南スーダン難民への心理社会的支援を行いました。

ウガンダ北部の支援現場では様々な苦労がありましたが、皆様の応援のおかげで紛争のトラウマを抱える難民の方々に何とか支援を届けることが出来ました。

本事業では、まず柱となる活動として小学生向けのワークショップを行いました。ビディビディ居住区内のAlaba小学校とMengo小学校から各32名ずつの生徒を選出して、全10回のワークショップを実施したのです。ワークショップでは様々な表現方法を通して子ども達の記憶を形に表現していきます。はじめは絵画(2次元)、次に粘土や針金(3次元)、最後には音楽(4次元)と回を重ねる毎に複雑な表現方法を用いることで、子ども達はそれぞれの感情や記憶と向き合います。初回の絵画セッションでは「失ったもの/こと」をテーマとして絵を書いてもらったので、どの子どもも大切な肉親を失った悲しみを絵に表現していました。また「忘れられないあの日」というテーマでは、銃を向けられた光景、親が目の前で殺される様子、など、私たちが想像もつかない出来事を体験してきた子どもの心の内を垣間見ることとなりました。

絵画セッションの一コマ。「忘れられないあの日」をテーマにそれぞれの思いを絵にします。
描いた作品についてそれぞれ皆の前で発表します。
作品の一部
粘土セッションで作成された作品。棺桶の色が非常に印象的です。
ちなみに「好きなもの/こと」をテーマに描いてもらうと
日本の子どもたちと変わらないような絵が見られます。
粘土セッションで作成された作品。棺桶の色が非常に印象的です。

針金セッションでは自分の過去を振り返りつつ、未来に向けての希望を示します。

針金の最後の部分は明るい将来に向かって、数センチほど上向きに残しています。

針金をもって発表する男の子。小学生には見えませんが、現地では18歳でも小学校に通う子どもたちも少なくありません。

​ワークショップの後半は、過去の記憶から未来へとテーマが移ります。ジオラマセッションでは将来に住みたい町をグループで作成しました。多くの作品が平和になった南スーダンの未来を表現しており、彼らにとって南スーダンは、悲しい記憶の場所であると同時に楽しい思い出の残る故郷であり、いずれは戻ることができる未来を望む場所であることが強く感じられました。また、前半のセッションまではずっと暗い表情をしていた子どもが、初めて子どもらしい笑顔を見せ、ジェット機つきの自分の家を自慢している姿を見て、私たちも明るい気持ちをもつことができました。

ジオラマセッションでの作品。子ども達の将来への夢が目一杯詰め込まれています。

今回の事業のクライマックスは、終盤の音楽セッションで、子ども達はグループに分かれて「過去」「現在」「未来」の歌詞を作りました。それをメロディーに乗せて1番「過去」、2番「現在」、3番「未来」として歌います。この音楽セッションには日本人専門家である桑山紀彦医師が加わり、子ども達の歌詞づくりをファシリテートし、演奏の場面ではギターの伴奏も行いました。1番の「過去」の歌詞では、暗い記憶が歌われ、2番の「現在」では難民居住区内での安定した生活、3番の「未来」では美しい南スーダンの故郷や将来の夢が語られ、子ども達の繰り返し歌う大きな歌声に、見学に来ていた親や教師たちも引き込まれていきました。この音楽セッションの時期には、SPJ理事長・鈴木が活動地を訪問し、子ども達と一緒に歌詞を作ったり演奏を行ったりしました。また、在ウガンダ日本大使館の亀田大使にもプロジェクトをご訪問いただき、子ども達に大きなエールを送ってくださいました。

音楽セッションの様子。笑顔で歌ってくれました。
SPJ理事長・鈴木が子どもの歌詞作りに参加している様子
音楽セッションに加わる亀田大使(中央)と日本人専門家桑山医師(右)

また、今回の活動では子ども達の親や学校の教師を対象とした、心理社会的ケアに関するワークショップも実施しました。子ども達にとって多くの時間を過ごす学校や家庭生活において、周囲の大人達がいかに子ども達の様子に気づいて適切な対処ができるか、ということも子ども達の心理状況に影響を与える大きな要素となります。そのため、保護者や学校の教師に対するワークショップの内容は、精神的に不安定な子どもにはどのようなケアが必要か、という基礎知識の提供が主となりました。保護者や教師達からは多くの質問が寄せられ、約5時間にも及ぶ長時間のワークショップにも関わらず、最後まで熱心にメモを取る教師達の姿が印象的でした。

教員向けワークショップの様子。実は教師たちも今まで表に出せなかった様々な辛い想いを抱えていたことがわかりました。

【終わりに】

子ども達の心理状態には戦争によるトラウマの他にも、避難後の新しい生活に基づく様々な不安要素が含まれており、そう簡単に解決するものではありません。しかし、少なくとも当初は言葉が少なく凍った表情をしていた子ども達が、ワークショップ後半になると笑顔を見せてスタッフと作業をするようになっていたことは私たちにとって確かな手ごたえでした。また、親からは「子どもが家で過去の話をするようになった」「学校での出来事はあまり話さないのに、ワークショップでの出来事はよく話している」など、家庭内での前向きな変化を報告する声が複数聞かれました。

教師対象のセミナーやワークショップでは、「このような支援は今までなかった」「もっと長いセッションでの研修を行って欲しい」「コミュニティリーダーを対象とした活動を行って欲しい」など様々な要望が挙げられ、改めて心理社会的ケアに関する支援ニーズの高さを実感する事となりました。

最後に、自分たちの父親や母親が目の前で殺された過去を変えることはできません。でも、これからどう生きるかを決めることは出来るはずです。

ワークショップに参加した子ども達には、トラウマに押しつぶされず前向きな人生を歩んでもらえる事を心から願っています。

今回の事業(6月15日~9月25日)では、子ども64名、保護者61名、教師202名に対して活動を行うことができました。また、昨年の事業対象校の子ども達計47名を対象とした特別ワークショップも1日だけ実施することが出来ました。おかげさまで昨年度事業を行った子ども達の元気な姿を再度見ることが出来、嬉しく思いまた勇気づけられました。このような活動を実施できたのも、皆さまの温かいご支援のお陰です。改めてこの場をお借りして心より感謝申し上げます。今回の支援の様子は下記URLにてより詳しく映像化されています。ぜひご覧くださいませ。

教師方との一枚。皆様の熱意が本当に印象的でした。
子ども達に「どのセッションが一番楽しかったか」と聞くと声を揃えて「Singing!」と答えました。最後には子供らしい笑顔をたくさん見る事ができました。

このプロジェクトは一旦終了しますが、これからもSPJはウガンダ北部でトラウマを抱えた南スーダン難民の方々に支援を届けたいと考えております。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします!

作成日:2019年11月18日