ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトの中間報告が発表されました!

ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトに関する中間報告地方アフリカにおける開発の成果―ミレニアム・ビレッジの3年後の姿」が発表されました。
http://www.millenniumpromise.org/pdf/MVP_Midterm_Report.pdf#zoom=100&pagemode=bookmarks&page=3
 エグゼクティブ・サマリーを翻訳しましたので、ぜひご一読ください。

地方アフリカにおける開発の成果
~ミレニアム・ビレッジの3年後の姿~
エグゼクティブ・サマリー


2000年9月に開催された国連ミレニアム・サミットにおいて、加盟国代表はミレニアム宣言を採択しました。このミレニアム宣言では、各国が極度の貧困を削減するために世界的なパートナーシップを新たに組織し、飢餓・ジェンダーの不平等・非識字・疾病といった課題に取り組むことを約束しています。そして、2015年までにこのミレニアム開発目標(MDGs)を達成することとしました。
ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトは2005年にケニアとエチオピアで試験的に導入され、2006年には10カ国のおよそ50万人の人々にまで拡大されました。このプロジェクトでは、国際的なMDG合意を実行しサハラ以南のアフリカが飛躍的発展を遂げる過程で、コミュニティレベルの開発を目指す統合的アプローチがどのように機能するか示そうとしています。ビレッジは極めて貧しい農村部に位置しており、20%以上の子供たちが栄養不良に苦しむ「飢餓多発地域」と考えられていたところに位置しています。ビレッジの選定に当たっては農業生態の多様性を考慮し、そこでは所得や食糧生産、疾病生態、インフラそして保健医療制度といったあらゆる課題が投げかけられています。プロジェクトは対象地域のコミュニティや政府によって進められ、コロンビア大学地球研究所やミレニアム・プロミス、国連開発計画(UNDP)その他のパートナーがサポートしています。
ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトは、5年間を1つのフェーズとし、計2フェーズ・10年間にわたって実行されます。第1フェーズは短期的成果の達成を目標とし、特に農業生産の安定や疾病管理、そして、コミュニティが貧困の罠を抜け出してMDGsを達成するための統合的な開発基盤を構築します。プロジェクトでは、科学的に実証された農業・教育・保健医療・インフラの支援が、地域に適合した形でコミュニティの主導のもと実行されています。初めの5年間においては、年間支援コストは一人当たり約120ドルに抑えられており、そのうち、およそ半分をミレニアム・ビレッジ・プロジェクトが支援し、残りを現地政府やコミュニティ、その他のパートナーが出資しています。第2フェーズの5年間は、農業部門における余剰生産物の商業化や、ビレッジ成長のための公共サービスの継続的な改善などに焦点が置かれます。
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進行状況
ミレニアム・ビレッジは、確かなプラットフォームによってモニタリング・評価が行われています。プロジェクト開始時および開始から3年後・5年後に、生物学的・身体的測定、さらには、作物生産の生物物理的データを含む社会経済・保健医療に関する詳細な調査が行われます。経済的コスト調査では、すべてのクラスターレベルの活動に対して、パートナーの寄与測定が行われます。最終的には、実行者・プロジェクトパートナー・受益者の活動について、質的なプロセス評価を行い文書化します。
このレポートでは、特にプログラムを導入して3年から5年までの初期段階における成果を取り扱っており、ミレニアム・ビレッジの早期導入を行ったガーナ、ケニア、マラウイ、ナイジェリア、ウガンダの5カ国に焦点を当てています。また、MDGs達成に向けた進展については、直近に終了した中期(3年目)の調査結果によっています。レポート内の全てのデータは、それぞれのクラスターにおける数百の家計をサンプルとし、基準値と3年目の評価データを比較しています。なお、このレポートでは調査結果の要約を扱っており、全体的な評価方法に関する詳細については、付録に記載されています。
ビレッジ比較などの詳細な科学的結論については今年の後半に発表し、専門家の審査を受けた科学専門誌にも掲載される予定です。また、現在はまだ10年計画の3年目が終わった時点でもあり、作業中の3年目の評価を記載している段階であることも踏まえて、本レポートでは暫定的にプロジェクトの特性に焦点を絞ったものとなっています。今回、評価中の成果を公表することによって、多くの方にこのプロジェクトを知っていただき、このプロジェクトがアフリカの僻地に蔓延する極度の貧困や飢餓、疾病を撲滅する可能性を持っていることをお伝えしたいと考えています。そして、2010年9月のMDGサミットを前に、このレポートがみなさんの議論の一助となればと思います。
プログラムの影響
初期の支援の一つが、長期残効型蚊帳(LLINs)を全ての寝室に提供することでした。3年後には蚊帳の使用率は7倍になり、配布地域のマラリア罹患は平均して60%も減少しました。はしかの予防接種率は、組織的なキャンペーンによって支援され、80%以上に達しました。農業分野では、改良種や肥料の投入とともに、農家に対して農業技術訓練を行うことで、主要生産物の生産量が2倍以上になりました。これにより、プロジェクト発足当初から問題視されていた、2歳児以下の慢性的栄養不良(成長阻害)を30%も削減することにつながりました。余剰生産物を無償提供してくれるコミュニティや農家とのつながりを通して、今や80%の子供たちが給食支援を受けており、子供たちの出席率の増加や成績の向上につながっています。
プロジェクトは短期的な成果を支援するだけでなく、基本的なインフラやサービスを広めることにも取り組んでいます。教育分野では、教室の改修が行われるともに、学校に電力を供給し、教材の提供も増やしました。初等教育への入学率も高いレベルを維持しています。
保険医療分野では、診療所の建築や改装が行われ、スタッフを集め、薬品や水、電気を含む必要な機材を整えました。診療を受けられない患者が出ないように、初期治療を無料で提供することはプロジェクトにとって不可欠でした。現地の病院にもてこ入れが行われ、照会された急患診療や産科医療を行えるようにしました。このプロセスは、緊急輸送や道路改良、携帯電話カバー率を拡大のためのパートナーシップによって強化されました。これらの長期的効果のある施策によって、HIV検査受診率が上昇したり、熟練した助産師のもとで出産する女性が30%も増加したりして、母体死亡を低下させる重要な支援となっています。
また、政府、現地コミュニティやプロジェクトとのパートナーシップを通じて、基本インフラへのアクセスも大きく改善されました。たとえば、安全な水が供給される人も3倍に増えましたし、高性能な下水処理施設も7倍に増加しました。
次のステップ
多くの分野で改善を示す確かな証拠が出ているものの、これらの成果を統合し、着実に持続させていくには、第1フェーズの残り2年においてプロジェクトのパートナーが効果的な協力関係を築くことが大切です。農業分野では、生産する作物の種類を増やす試みや、市場アクセスの改善を進めていき、更には、農産物加工や商業開発支援といった価値を生み出す取り組みへとつなげていきます。教育分野では、女子の進学率を高めたり、学校の質を高めたり、あるいは、中等教育を促進する取り組みを優先して行わなければいけません。保険医療分野では、基本的なインフラをほぼ全地域で整備し、継続的な診察ができるようにするだけでなく、支援も家庭レベルから地域医療従事者にまで広げていきます。そして、これらの活動が支援のない状態でも自動的に修正しながら機能するようにすることが大きな課題です。携帯電話技術を利用し、リアルタイムに情報伝達できるようにするプログラムはこれらの活動を一層後押しするでしょう。なお、現在進められている主なインフラ建設は、現地で適切に維持管理できるようにすることも念頭に置いた上で、最優先項目となっています。
2010年9月の国連MDGs国連首脳会合は、2015年までのMDGs達成に向けて最後の5年間をスタートさせることになります。このレポートで記載されているような経験から示唆されるのは、政治的な支援や効果的パートナーシップとあわせて、ドナー国が約束したわずかばかりの資金があれば(まだ提供されてはいないが)、アフリカの僻地にあるビレッジはMDGsを達成でき、貧困の罠から抜け出せるということです。このレポートはミレニアム・ビレッジ・プロジェクトで行われたセクター・ストラテジーの情報を提供するものであり、各地域の詳細な進行状況や、プロジェクトの導入に際して障害となった事項や導入を促進した事項についても記載しています。まだ10年の取り組みのうち3年が過ぎた段階ですが、この初期の経験から得られた暫定的な教訓が、総体的に極度の貧困に対処していく試みを拡大する各国政府の一助となることを願っています。私たちはこのレポートに記載された統合的なコミュニティ主導の開発アプローチを、現地の実情にあった形で適切に運用することが、極度の貧困を終焉させ、MDGsを達成する鍵となる戦略と考えています。