ミレニアム・ヴィレッジからレポートが届きました ②

large_IMG_2425_croppedウガンダ、ルヒーラ村の社会性と情動の学習SEL

Golda Calonge [ゴルダ・キャロンゲ] からの報告

 

上述:ルヒーラで行われている若年女性を対象としたエンパワーメント・プログラム「Eminyeeto」に参加する女性達   ミレニアム・ビレッジ・プロジェクト(MVP)でHIVウイルス / エイズ(HIV/AIDS)及び結核対策イニシアチブの責任者であるYanis Ben Amor医師、そして、コロンビア大学所属内外科専門学校医学生のMichael Healy氏は、2010年にウガンダ、ルヒーラ村で世代を越えた性交渉 / CGS [cross-generational sex]に関するデータを収集するため、民族誌学的評価を行いました。

この団体は、無作為に抽出した18歳の若年女性を対象にサンプル調査を行い、彼女らに幼少期を振り返ってもらい、当該本人もしくはその友達が、年上の成人男性と性交渉を持ったことがあるかについて回答を求めました。ルヒーラの少女を含む若年女性の70%から80%が「当該本人もしくはその知り合いがCGS[世代を越えた性交渉]の経験がある」と回答したことが明らかになりました。

CGSとは、若い女性が年上の成人男性と、学費や携帯電話といった援助と引き換えに、合意の上で行われる性交渉だと見なされています。そういった性交渉は学齢期の女子生徒に悪影響を及ぼしているのです。特にHIV/AIDSの感染リスクを増大させ、自尊心をも失わせるといったようなものがその例としてあげられます。   社会性と情動の学習[SEL]イニシアチブは、上述の評価結果を受けて開始され、CGSの社会心理的影響に対処するため、学校の教育現場における思春期の女子生徒に対する支援提供を目的としています。この取り組みは女子生徒の自己管理、自己認識、社会的認識、責任ある意思決定、対人関係構築に必要な能力など、中核能力の向上・啓発につながります。

SELは生殖保健サービスの提供及び収入作り活動の指導と合わせ、学内外を問わず、少女を含む若年女性の健康面、経済面、教育面でのニーズに対応すべく、包括的な取り組みを実践しているのです。   特別支援教育と社会福祉士としての私の経験がSELの価値を気づかせてくれました。それは、アメリカの複数の学校で導入したSELの成功です。この実施校では、教育目標を支援するためには、女子生徒の社会心理的要求に対応することが必要不可欠であると認識していました。SELはアメリカですでに導入され、いじめ、暴力、不登校とこれに付随する問題の発生を減らすために行われているのです。

ルヒーラ村のミレニアム・ビレッジ・プロジェクト(MVP)に赴任した時、文化{いぶんか}との付き合い方に富んだ指導案[指導の手引き]を作成するため、実地調査記録を正確に適合させ改変することが私の役割でした。また、社会責任意識の養成に取り組むモーニングサイド・センターの支援で、私はルヒーラ村の現状に合わせたガイドラインやレッスンプランの例を得ることができ、現地で得た関係者からのフィードバックと合わせその作成に利用しました。我々は(人として)成長する上で直面する難しさと素晴らしさという普遍的なテーマの存在について社会に広く知らしめる中身のある証言[記録]を作成してきたと思っています。

3月半ば、私はルヒーラ村で(授業)カリキュラムに関する教員研修に立ち会う機会に恵まれました。研修に参加した教員は女性ばかりで、各々の学校で、思春期の女子生徒のためのアフター・スクール・プログラムを運営することにより、生徒と強い関わり合いを持っている方々ばかりでした。   教員研修終了後、地域社会のニーズに対応するため、地元の専門家と連携して指導案[指導の手引き]の改訂と改善を続けることで、とても刺激を受けました。我々は、教員に感想や意見を求めましたが、その回答の多くは圧倒的に肯定的なものでした。   しかしながら、1つのコメントが目に止まりました。ある教員に、男子グループや男女共学校でもこのレッスンが導入されるかもしれないのに、なぜ年配の男性教員を招かないのかと尋ねられたことです。私は彼女の質問に対して、プログラムに関わる教員のみを研修対象としているということ以外、明確な回答ができませんでした。なぜなら、それが唯一、このルヒーラ村の地域社会とのつながりだからです。よく考えてみると、SELの基本的要素を教えるという不釣り合いな責任を女性教員だけに負わせている今、少女を含む若年女性のエンパワーメント教育を本当に実施できていると言い切れるのか、疑問に思いました。

少女を含む若年女性のエンパワーメント教育の支えとなるよう、我々のこのプログラムに大きな役割を果たす男の子や成人男性を動員することが、次のステップにつながると私は考えます。この支援制度を基にして、SELカリキュラムが強固で持続可能な地域コミュニティー形成に寄与させていくために、女性教員は、この支援に対する責任と認識を最高責任者として背負っているわけではありません。教員がどのようにすれば適切に生徒を医療従事者や宗教指導者といった他のコミュニティー・リーダーにつなげることができるか、更なる教員研修を行う必要があります。

当初は、CGSの影響を受けやすい人の社会心理的サポートを行うために、SELカリキュラムが導入されましたが、これら取り組みが生徒にとって今、どんな問題が重要か尋ねる機会になったとも考えられます。それゆえに、日頃から新しい改善点を取り入れ、SELカリキュラムの改訂と改善に取り組むべきです。SELカリキュラムは、教育原理以上に教員の支援ツールとしての役割を担い、教育者、生徒、そしてコミュニティー・メンバーの一番良いところを引き出すのに役立てることができます。

SELはミレニアム・ビレッジ・プロジェクト(MVP)に重要な影響をもたらします。もしこの試験的な新しい試みがルヒーラ村で成功を収めれば、CGSが横行している他の地域でも、強化・改善された学校の教育現場におけるこの支援から恩恵を得ることが叶うかもしれません。医療チームは現在、SELの活用効果調査を行っていて、登校している生徒と不登校の生徒(両者)の自信、リーダーシップ、責任ある意思決定に関する指標分析を進めています。この調査結果は、ルヒーラのみならず、地域を越えて、少女を含む若年女性のプラスになるのです。

 

[翻訳ボランティア] 学校法人山口学園 ECC国際外語専門学校 国際ビジネス学科

総合英語コース <通訳専攻>1年 日和田 茉美、藤本 桜子、増井 達大、松山 佳奈