【メッセージ】ジェフリー・サックス教授からのメッセージ ①

ミレニアム・プロミス・ジャパン特別顧問ジェフリー・サックス教授からメッセージが届きました!JS MasterHeadshot_low

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忘れられたミレニアム目標である初等教育の普及

ジェフリー・サックス  2014年6月22日


 極度の貧困との闘いの中、私たちは難題に直面している。2000年に国連ミレニアム開発目標が制定された際、これには保健および教育的目標が含まれていた。保健目標に関しては金銭的な意味も含め勢力的に行われ、成功を収めた。一方で基本教育に関しては失敗に終わった。アメリカ政府や各国政府は考えるまでもない課題を途中で放棄したのだ。

 目標を制定した際、私は前国連事務総長コフィー・アナンと共に世界エイズ・結核・マラリア対策基金の設立支援に取り組んだ。皮肉を言う人の中にはよくあるワンパターンな反対をする者もいたが、その世界基金もアメリカの新たなプログラムでもあった大統領エイズ救済緊急計画(PEPFER)や大統領マラリア・イニシアチブも数十億ドルを集めた。15年程が経過し、これらのプログラムは強固に機能しており、援助は期待通り機能し、疾病は抑制されている。

 一方で教育における類似の基金の設立は不可能であった。教育の普及を推進するという考えは政策的に孤立し、疾病抑制の時と同等のレベルの投資家の関心を集めることは出来なかった。もちろんわずかな援助でも数百万人の子どもたちが学校に通えるようにはなったが、資金不足により学校では教育用具や経験を積んだ教師、安全な水さえも足りないことが度々あった。そして依然として数百万人の子どもは学校に通えていない。

 なぜ違いが生まれたのか。私は10年間困惑してきた。このようなことになったのは、健康の危機、生きるか死ぬかといったようなことの方が教育よりドラマティックであるからなのか。製薬業界が健康への関心を広めるのに一役買った一方で、民間セクターがグローバル教育に関心を示さなかったからなのか。あるいは世界の指導者たちが単に必要な努力をしなかっただけなのか。

 それにしても、赤面してしまう程の資金不足のせいで、多くは紛争地域に住んでいる何千万の子どもたちが学校に通えないというのは不条理で、とても深刻なことである。今、貧しい子どもたちを教育しなければ、数十億ドルを費やしてボコ・ハラムやアルカイダの一員となった彼らと再会するということもありえるのだ。

 来る6月26日の木曜日(訳注:2014年6月22日執筆時点)、私たちはこういった現状を変え始めることができる。政府や団体がブリュッセルに集まり、世界における最貧困層の子どもたちへの初等教育に対する財政的コミットメントを再確認する。主要な支持グループ、「教育のためのグローバルパートナーシップ(GPE)」は世界が一歩踏み出して援助をしなければ、読み書きが出来ず、数字が分かるようにならない子どもたちを支援する。GPEは現在、増資交渉において4年間に渡り35億ドルを求めている。これは概算で先進国の1人につき1ドルを出資するのに相当する。これ以上優良な投資を考えるのは難しい。

 この案は朝飯前のはずなのだが、そうはいかない。現在のところアメリカが2年で2.5億ドルの寄与要請に応じる保証はない。そもそも、アメリカ国防省が2時間で使ってしまう1.25億ドルを1年毎にワシントンに懇願する必要があるのだろうか。公衆衛生のように、教育関係の寄付も用品や教員研修や教員配置、教室や水道や衛生システムなどのインフラ設備といったように財源から使用までをたどるのが容易い。GPEは被援助国に対して計画と数値的、および段階的目標を定めるよう求めているが、それは子供たちの利益となる健全で妥当な管理であり、難しいことではない。

 しかし、本交渉ではより高みを目指すべきで、まさに21世紀にふさわしい教育実現への国境を越えた尽力が必要となる。現在私たちはおよそ6000万人の子供たちに初等教育を提供することに取り組んでいるが、それだけでなく、教育の機会を持たない数億人の子どもたちへの中等教育の保障も目指すべきである。

 また特に女性教育に力を注ぎ、少女たちが10代で結婚を強いられるのではなく、中等教育を修了し、労働力となり得るような技術を習得できる、あらゆる機会の確保に尽力するべきである。女性を教育することは地域コミュニティーを変え、その恵みは次の世代、母から子へと継承されていく。

 仲間たちと私は、通信会社の第一線を行くエリクソン社と共同でConnect To Learnと呼ばれる、まさにそのようなプロジェクトをすすめている。目標はアフリカの貧しい村々にいる少女たちが高校を修了できるよう、通信技術を使うことだ。これらの地域の学校には本はほとんどないが、Connect To Learn教室はオンライン教材を備え、少女たちはそこから多くの情報を得ることが出来る。携帯電話での支払を可能にし、銀行システムという段階を飛び越えた村落のように、貧しい村々のコミュニティーも通信技術を用いて教育面で飛躍を遂げるかもしれない。

 もちろんConnect To Learn、そして関連するイニシアチブを桁違いに拡大して、数百数千ではなく数億人もの子どもたちに届くようにしなければならない。そのためには、通信やSNSの大手企業、国家、個人の寄付、その他多くの協力が必要である。それらの財源を柔軟かつ創造的な教育基金に投資してもらうこと。以上が今週(訳注:2014年6月22日執筆時点)ブリュッセルで我々が目指す目標である。


www.jeffsachs.org
www.earth.columbia.edu/mvp



この英文は学校法人山口学園 ECC国際外語専門学校様のご協力により、学生の方に翻訳していただきました。
[翻訳ボランティア]
学校法人山口学園 ECC国際外語専門学校
国際ビジネス学科 総合英語コース<通訳専攻・翻訳専攻>1年
川原愛美様、菅原和華奈様、友長理良様、吉田葵様
ありがとうございました!