第1回ミレニアム・プロミス・ジャパン研究会報告

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Gwyn Prins教授 (London School of Economics and Political Science教授)
テーマ
ケニア大統領選挙不正後のアフリカ ~ 国際社会に何ができるのか
研究会報告
■アフリカの政治腐敗
ケニア大統領選不正とそれに伴う暴動は、アフリカ連合の失敗、アフリカの影を表面化させてしまった。アパルトヘイトは10年前に終わったものの、ジャンジャウィードによるスーダンのダルフール紛争など、どうしたらアフリカの政治腐敗を終わらせることができるのか。
■アフリカの抱える構造的問題
アフリカには、政治腐敗以外にも構造的な問題があり、1. 地理、2. 天然資源(天然資源のもたらす富は腐敗と暴力の原因になる)、3. ガバナンスのまずさ、4. 紛争、という「4つの罠」がアフリカをとらえている。
■国際社会に何ができるのか
このようなアフリカの状況に対して、国際社会にできるのは、1. 援助、2. 軍事介入、3. 法・憲章、4. 通商条約の4つ。


■援助で何ができるのか
Prins教授の考える「賢い援助」は、腐敗した政府に対抗できるよう、一般の人々に力を与えるような援助を行うこと。人々に力を与える援助とは、例えば、グラミン銀行のようなマイクロ・ファイナンス、携帯電話などの通信手段、教育、蚊帳などのヘルスケアのことで、このような援助を最も効果的に行っているのは、国連でも政府でも支援団体でもなく、個人であるとPrins教授は考えている。
■教育
援助の中でも教育は特に重要で、どんなに賢い子でも、お金が無いとエリート教育は受けられない。
アフリカ人の少女が、支援による資金を得て、ハーバードに入学した。その子が資金提供者であるアメリカ人の富裕層を前にしてスピーチを行ったことがあったが、彼女は、「貧困は嫌だ。私は国を救いたい。でも支援で救うことができるのは、ひとりづつでしかない(You can help Africans one at a time)」と言って集まった人たちを泣かせた。
重要なのは、巨額のお金で援助を行うことではなく、変化を起こそうとしているアフリカの一般の人々を、腐敗した政府の干渉を受けずに、先進諸国の支援によって救い、彼らに力を与えること。この意味で、先進諸国は限界を自覚しつつ、強みを生かした援助を行う必要がある。
■「The Bottom Billion」からの引用
“Let us be clear. We cannot rescue them. The societies of the bottom billion can only be rescued from within. In every society of the bottom billion, there are people working for change, but usually they are defeated by the powerful internal forces stacked against them. We should be helping the heroes….
(「明言しておかなければならないのは、先進国が貧困国を救うことはできないということだ。最下層の10億人は、自らの力を持ってしか自らを救うことはできない。この10億人の人々の全ての社会において、変革を起こそうとしている人々がいる。しかしそのような人々は、その社会の権力者に抑圧されている。私たちはこのようなヒーローを助けなければならない・・・)
Paul Collier, The Bottom Billion, p.96