去る9月21日からニューヨークで行われましたミレニアム開発目標サミットでの潘基文国連事務総長の開会の辞を翻訳いたしました。
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2010年9月20日
国連ミレニアム開発目標サミット
国連事務総長
第65回総会議長殿
国家元首や政府首長の皆さん
第64回総会議長殿
大使、高官の方々
ご出席の皆さん
国連ミレニアム開発目標サミットにようこそ。世界の指導者がこのように大勢お集まりいただき、感謝に堪えません。
我々がここに集まっているのは、より繁栄し、安定し、平等な世界を目指して戦うことこそ、国連の使命に他ならないからです。
我々がここに集まっているのは、10年前、世界の首脳が集まり、国際社会は人類すべてに対して、必要なものを得られるようにするために努力を惜しまないと約束したからです。
その時に決議した8つのミレニアム開発目標は画期的なものでした。
我々は共に、極限の貧困に終止符を打つための詳細な計画をねり、実現可能な目標及び実施計画を明らかにしました。そして、計画に関わる人々が、たとえ異なる価値観を持っていたとしても、全員が賛同できるような枠組みを作り上げたのです。
我々は貧困の撲滅という長年取り組んできた任務を、緊急に解決しなければならないものとし ました。
そして今、真の結果を手にしています。
それは、新たな考え方および今までにない形の官民連携です。また、就学率の大きな伸び、きれいな水が手に入る地域の拡大、疾病対策の改善、携帯電話から農業にいたる様々な分野での技術の普及でもあります。
開発に関するサクセスストーリーは過去に例をみないほど多くあります。これらの変化をもたらすミレニアム開発目標の影響力は誰の目にも明らかです。我々は、この結果を誇りに思ってよいでしょう。
しかし、これらの結果は未だ脆弱で、我々が守り続けていかなくてはならないものです。
どんどん時が過ぎていくのに、やるべき課題はまだまだ多くあります。
お腹をすかせたわが子を寝かしつけなければならない母親たちがいます。 このような恥ずべきことが何百万回、何千万回と毎晩繰り返し起きているのです。
学校にいるべきはずの少女たちが、水汲みや薪ひろいで辛い思いをしています。
出稼ぎ労働者らは故郷を遠く離れた大都会のスラムで、世界的経済不況の中で職が消え、仕送りが消えゆくのを目の当たりにしています。
皆さんは我々の置かれている状況をよくご存知です。足りないもの、そして得たもの。効果があるものと、そうでないもの。
皆さんにお配りした報告書には、統計、分析結果、提言といった、効果的な政策およびプログラムに必要とされるものは全て盛り込まれています。
我々は皆さんに現状を全てお知らせしました。
では、皆さんに今日、何をお願いするのでしょうか。
それは、忠実であること、です。
国際社会が連帯の上に成り立っている、という意識に忠実であることです。
人間の尊厳を脅かすような極限の貧困に終止符を打とう、という決意に忠実であることです。
そのためには、インフラ、小規模農家、公共サービス、そして何よりも女性と女子のための堅実な投資がなされなければなりません。この水曜日、私は「女性と子供の健康のための世界戦略」を打ち出します。これは様々な目標を実現へと導く相乗効果の素晴らしいきっかけとなるでしょう。
忠実であることはまた、経済危機においても弱者を支援することです。財政を立て直すために貧しい人々への援助を犠牲にしてはなりません。何千万人もの人々のライフラインである政府開発援助から決して手を引いてはなりません。
また、気候変動に対する本当に公正な取引と対策も含まれます。難しい決断を今後の気候会議や次世代に先送りすれば、代償がかさむのみです。我々は持続可能な取り組みに向けて物事を進めていく必要があります。
忠実であることは、国家間および国内の不平等に目を向けることでもあります。急成長を遂げた国々においてでも、不平等は徐々に社会の連帯を蝕んでいきます。
忠実であるためには、社会通念を見直す必要があります。経済危機からの立ち直ることは、我々をそもそも危機に追いやった、不完全で不正な道へと逆戻りすることを意味してはなりません。
みなさん
数々の問題があっても、懐疑的な意見があっても、2015年の期限まで時間はどんどん過ぎていっても、ミレニアム開発目標は達成可能です。
今年、私はアフリカの国々を回り、私自身の目で何が可能かを見てきました。マラウィのムワンダマのミレニアム・ビレッジで、ベニンのソンガイ村で、私は改革、組織化されたプロジェクト、それを実現する努力と信念を見ました。
このような信念に対して、我々も応えなければなりません。われわれの持つ道具を使って、我々の必要とする資源を届けることによって、そして、何よりも政治的リーダーシップを発揮してください。私は皆さんにミレニアム開発目標を自分自身の目標にすることをお願い致します。
皆さんが会場に入場する際に上映したショートビデオの中で、ナイジェリアの国連シティズン・アンバサダー(一般市民大使)は、「我々は世界各国の指導者を待っています。」と話しました。
ミレニアム開発目標のテーマソング、「エイト・ゴールズ・フォー・アフリカ(アフリカが目指す8つの目標)」の中で、モザンビーク出身のミンガスさんは、「まさにこの瞬間にも、我々には力がある」と歌っています。
多くの人々が尊厳ある生活に必要な最低限のものを欠いている限り、心から満たされた気持ちになれる人は誰もいません。
人類に恐怖と絶望が蔓延していると知りながら、心休まる人は誰もいないでしょう。
全ての人々のよりよい未来のために投資をしようではありませんか。これ以上価値のある国際事業は他にありません。
力強い希望のメッセージを発信しましょう。そして、約束を実現させましょう。
ご清聴ありがとうございました。