『外交フォーラム』巻頭言(2008年7月号)

巻頭随筆
辛抱強く草の根交流を深めるために

鈴木りえこ
ミレニアム・プロミス・ジャパン理事長

四〇カ国ものアフリカ首脳と七五の国際機関の代表らが一同に会した第四回アフリカ開発会議(TICADⅣ)は、「横浜宣言」「横浜行動計画」等を採択して無事終了した。みなとみらいの会場やホテル・ロビーは国連総会を彷彿させる外交・社交の最前線となり、北海道洞爺湖サミットへ向けて、地球温暖化防止やアフリカ支援などをグローバルにアピールする道筋を示した。
2534077754_01a1fee9fd_m.jpgアフリカに関心が薄い日本で、効果的に支援を訴えるにはこの時期を逃すわけにはいかない。国連ミレニアム開発目標に沿った貧困削減を目指して、TICAD開催直前に夫・北岡伸一(東京大学教授)と私はNPO「ミレニアム・プロミス・ジャパン」を立ち上げた。国連事務総長特別顧問のジェフリー・サックス教授(コロンビア大学地球研究所長)がニューヨークで設立した「ミレニアム・プロミス」と同じミッションを掲げ、深く連携してアフリカン・ミレニアム・ビレッジ(一〇カ国八〇村)を支援する活動を始めるためである。
北岡が国連次席大使に就任していた二〇〇五年、サックス教授から依頼されて日本政府とミレニアム・ビレッジ・プロジェクトをつなぎ、政府が五年にわたり二〇億円の資金提供を約束して、この画期的なプロジェクトが動きだした。特徴は、国家間の援助とは異なり、援助される側が明確でその効果が透明であること、包括的に支援することで短期間に村人の自立を促進できることである。
1812666148_9c4da14411_m.jpgまずは現場を知らなければならない。私は、二〇〇五年からサックス教授の一行に同行して、何度かアフリカの村々を視察した。そこで、国家首脳を対象としたTICADで演説するのと変わらない情熱で、地べたに座った村人たちを相手に一日に何度も話をする教授の姿を見た。TICADⅣ閉幕後、中華街で紹興酒を飲みながら「これで少しは休める」という側近の言葉に、彼は「二〇一五年までは休めない。それが済んだら二〇二五年がある」と応えた。
ミレニアム・プロミス・ジャパンの設立趣旨は、一日一ドル未満で暮らす最貧困の人々の自立を助けるという人道的なものだけではない。日本の若い人たちにアフリカを知ってもらい、国際的なリーダーに育ってほしいという願いもある。そして、民主主義国家として日本のグローバルな地位を強化するため、辛抱強くアフリカ諸国と草の根交流を深めていくことでもある。
すずき りえこ
日本女子大学文学部英米文学科卒業。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス大学院にて国際関係論修士号取得。株式会社電通総研主任研究員などを経て、二〇〇四年四月~〇六年九月ニューヨークに滞在、その間NPO「ミレニアム・プロミス・ジャパン」設立に向けて活動を始める。著書に『超少子化――危機に立つ日本社会』、論文に「ブッシュ大統領への手紙」(八七年『ニューズウィーク』賞入選)、「サイレント・レヴォリューションを超えて」(九七年読売論壇新人賞優秀賞受賞)など多数。
(ミレニアム・プロミス・ジャパンホームページ:http://mpjapan.sakura.ne.jp/spj2023/)