ハチミツが支える村 ~ ムボラ・ミレニアム・ビレッジ~
Frederic Geigerからの報告
西タンザニアにあるタボラ地区は、ミオンボ森林地帯に生息するハチが作るこげ茶色の蜂蜜が有名な国内最大の蜂蜜生産地区です。
この地域の気候と地形条件が国内外問わず、 知名度の高い、美味しくて高品質な蜂蜜を生み出すのです。 ムボラ村(ミレニアム・ビレッジ)に住む多くの地元養蜂作業員は、蜂の巣から蜂蜜を収穫していますが、この地域で採用されている装置や技術が原因で、最近までその生産量には限界がありました。市場への交通の便の悪さやビジネスに関する知識不足もまた、商業としての養蜂産業の成長を妨げてきました。
ミレニアム・ビレッジ・プロジェクト(MVP)は、養蜂場を支援し、蜂蜜の生産を近代化、商業化する取り組みに着手しました。
ほとんどを自給自足で生活している農耕社会で、タボラ地区の養蜂従事者の持続可能な生計の安定と食の安全を保証することがその目的です。 現代の養蜂技術を採用した場合の生産量は、1年に1つの巣から60kgも見込まれるですが、従来の技術の場合、わずか6kgしか生産できません。つまり10倍増になります。
従来の巣箱は、ハチが巣を作ることができる普通の木製か粘土囲いのものが使われます。蜂蜜を採取する場合、養蜂作業員は蜂の巣を壊さなければならず、蜂蜜を再度作り出せるようにハチは再び巣を作らなければいけません。
それとは対照的に、最近用いられている巣箱は取り外し可能で、あらかじめ巣が取り付けられています。これにより、ハチは蜂蜜の生産にもっと力を注ぐことが可能になります。遠心分離機を使うことで、養蜂作業員はハチの巣を壊さずに割板製の巣箱から蜂蜜を採取することができます。そして、ハチはすぐに蜂蜜の採集を再開できるのです。 これらの技術改良は、養蜂作業員にとって多くの利点があります、例えばより少ない巣箱でより多くの蜂蜜が生産されますし、より狭い範囲に巣箱を設置することができるので、蜂蜜採取の簡素化につながるでしょう。また、この技術で生産される蜂蜜は、より品質の高いものになり、さらに高値での販売が可能となります。
オーガニック認証を受けた蜂蜜― 加工処理施設の建設も現在計画されており、さらに養蜂場経営者への増収増益が見込まれています。
ミレニアム・ビレッジ・プロジェクト(MVP)は、これまで養蜂経営者を支援し、協同組合化の推進に貢献してきました。これにより、養蜂事業の完全資本化が可能となり、合理化された生産技術の導入で、交渉力向上と業務効率の改善につながりました。
2012年には、190人の養蜂経営者が結集し、ルオラ養蜂協同組合を設立しました。現在、同組合は3000個の蜂の巣を所有していて、今後5年間のビジネス計画を策定、そして今年の3月には同組合の正式な法人登記が叶いました。 これまでは、ほとんどの養蜂従事者は自宅で蜂蜜を売っていました。そして、さらに市場販売で利益を上積みしていた養蜂従事者は、市場へのアクセスが乏しい事情から中間業者に非常に少額で蜂蜜を売らざるを得ませんでした。中間業者は蜂蜜を安く仕入れ、それを市場で販売することで利益を見出していたのです。
しかし新しい枠組みが導入された現在では、ルオラ養蜂協同組合が主要市場としての役割を果たし、同組合に加盟する養蜂場が生産した全ての蜂蜜が適正かつ適当な価格で取引されています。
明るい話題は、将来、市場となる可能性のある地域の存在です。タボラ地区で生産される蜂蜜は、中東地域のみならず、オランダ、ドイツ、イギリス、日本、中国でも人気です。健康意識・志向の高い市場では、蜂蜜由来成分を含む薬や化粧品のみならず、人工甘味料に替わり、健康にさらに良いとされる蜂蜜を原料とする製品への需要も高まってきています。 国際連合食糧農業機関(FAO)によれば、2008年の蜂蜜世界生産量は、推定150万トンに達し、2015年までには、さらに200万トンに達すると見込まれています。 以前は天水農業でなんとか自給自足の生活を立てていたこのムボラ村の養蜂従事者にとって、この自立した収益源の確立は食糧安全と繁栄に向けたとても重要な先駆けです。ムボラ村での養蜂事業は、世帯収入を引き上げる上で、最も可能性を秘めた経済活動の一つであり、それゆえに同事業は2015年以降もムボラ村の持続可能な社会づくりにおける大切な一歩なのです。
[翻訳ボランティア] 学校法人山口学園 ECC国際外語専門学校 国際ビジネス学科
総合英語コース <通訳専攻>1年 小倉 美玖、窪田 光、中村 建登、松山 さくら