・障害者の雇用に関して
半年間の準備期間を経て、この取り組みは7月から始まりました。障害者を雇用するには様々な規定があります。休憩室、男女更衣室等の設備のほか、精神衛生看護士、協力医療機関等の整備も決められています。ハローワークから募集をかけると3日間で定員の20名を超える応募がありました。中には釜石市から応募してくる人もいました。現在は、精神疾患、精神面の障害者を中心に20名を受け入れています。
・一人一人に適した仕事を
障害者の雇用は一筋縄ではいきません。一人一人に適した仕事を与えなければならないからです。他人と強調して働くことができる人もいれば、出来ない人もいます。1時間しか集中して仕事のできない人もいます。時には予期しない事故が起こることもあります。草刈り機を使わせるのは危険だと思い、鎌で草を刈らせていると間違えて手を切ってしまったのだそうです。でも、危険だからとやらせずにいると、仕事の範囲は狭まってしまいます。自分の身を以て知ることで気を付けて物を扱うようになり、集中力も身に付くのです。本当に一つ一つを体験させ、障害者の方が自ら学んでいくのをじっと待つことが大切です。
課題は、彼らの中には与えられることに慣れてしまって、権利を主張してばかりいる人がいることです。しかし、今まで働いていなかった障害者の方々は、ここで働くことで変化が見られました。先ず、顔つきが変わりました。居場所があること、仕事をすることで自分の存在価値を見出しているようです。
・グリーンケアとは
グリーンケアは障害者に特化した人材育成、派遣を行う合同会社です。ここでは、グリーンケアから多田自然農園へ障害者を派遣する形をとっています。
・なぜ障害者を雇用しようとしたのか
多田氏は障害者を雇用しようと思って雇用をはじめたわけではありません。農家の経営者は65歳以上が65%を占めていますから、このままでは将来的に労働力の不足が危ぶまれます。実際に、年々農地が荒れてきています。そこで労働力不足解消のために、障害者の雇用を考えたわけです。
・今後の事業展開
障害者雇用の受け入れのモデルケースとしたいと願っています。障害者雇用促進法においては、企業に対して、雇用する労働者の1.8%に相当する障害者を雇用することを義務付けています。しかし、通常の会社で障害者のためのトレーニングを行い、雇おうとするとても難しいのです。よって、グリーンケアのように専門性をもって受け入れるところが必要だと感じています。グリーンケアが障害者雇用のモデルケースとなるよう成功させなければいけないと自負しています。現在、農業の他、パン、バターを生産し、チーズ工房を建設中です。今後は豆腐、漬物、チーズ、スイーツも生産していくつもりです。 多田自然農場とグリーンケアには、全国から視察団が訪れているそうです。障碍者の方々は、視察にも慣れ、私たちが挨拶すると、笑顔で答えてくれました。
・瓦礫もなくなりすっかりきれいになった釜石市内
遠野市での視察ののち、釜石市内の様子を車で視察しました。瓦礫は除去され、震災直後と比べると見違えるほど整備されていました。通常営業を始めた店舗もありましたが、バスやワゴン車で営業しているような飲食店も見られました。建設中の建物も多く、これからの更なる復興が期待されます。
今回、視察で多田自然農場の多田克彦様には大変お世話になりました!
被災地支援や障害者の雇用はアフリカ支援とも共通する部分もあり、大変勉強になりました。今後も協力してお互いの活動に活かしていけたらと思います。