11月23日から約一週間、MPJ理事長・鈴木りえこと事務局長・伊藤正芳がケニアを訪問いたしました。これはデジタル・グリッド・ソリューションズ株式会社様や東京大学様、株式会社電通様等との共同事業である「デジタルグリッドを活用した地方電化及び新産業創出事業準備調査(BOPビジネス連携促進)」を行うためのものです。ナイロビでは、当事業のテスト店舗に加え、在ケニア日本大使館、JICAケニア事務所、コロンビア大学グローバルセンター内のMDGセンターを訪問し、当事業についてのご報告や意見交換等をさせていただきました。
ナイロビを後に私たちはビクトリア湖畔の町キスムに移動しました。ここでもデジタルグリッド事業のテストの現場のほか、ミレニアム・ビレッジであるサウリ村も訪れ、当事業のさらなる可能性について探りました。ここは、最初にミレニアム・ビレッジ・プロジェクトが始まった村のひとつで、キスムからさらに車で40分ほど奥にあります。2005年のプロジェクト開始時には飢餓で苦しんでいたといいますが、プロジェクトのおかげでいまでは村人によるさまざま事業が立ち上がり、自立に向けて着実に歩んでいるように見えました。デジタルグリッド事業の担い手となりうる、意欲あふれる人たちもたくさんいます。
意欲あふれる商店事業者たち
商業だけでなく、農業、淡水魚の養殖業といった第1次産業、乳製品加工業という第2次産業の分野にも、意欲あふれる事業者たちがいます。そこには、知恵と努力とコミュニティー内の相互協力で貧困から抜け出そうとする熱意がひしひしと感じられます。
しかし、彼らの事業を脆弱にしている障害があります。電力供給の不安定さです。ヨーグルトの製造のためには、生乳を冷蔵したり、発酵中に一定の高温を保つ必要があります。ようやくの思いで電線を引き込み、せっかく設備を電化しても、不意に何度も起きる停電がそれを無駄にしてしまいます。また、トマトの温室では点滴灌漑で水の使用を抑えながら栽培する工夫がなされています。村全体の水道普及率はようやく1割程度で、水は水源まで汲みに行かねばならないのが普通。いずれにしても、とても貴重です。ただ、その農家にはせっかく水道が通っているのに、断水にみまわれることがあります。水道システムが電力に依存しているからです。これらの断片的なエピソードからも推し量られるように、開発途上国において電気を普及しようとすることには大きな意義があります。水、食料に加え、エネルギーが焦眉の急となっている所以です。その意味でも、開発途上国での地方電化を目指す日本発のデジタルグリッド事業を発展させていきたいものです。
私たちの当事業に対する思いに、サウリ村ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトチームも応えてくれています。ここにはリーダーのジェシカさんを中心として、さまざまな開発分野の専門家が集っています。しかも彼らは現場をよく知っています。そこで私たちは、このデジタルグリッド事業でどのようにひとびとの役に立って裨益していくべきか、アイデアを出し合いました。私たちは彼らとの協働で、相互に恩恵を享受できるものと信じています。
サウリ村プロジェクトチームとの
ブレーンストーミング
実際、このサウリ村のチームは、上述したように産業分野でさまざまな成果を出してきました。さらに例えば保健分野でも、2005年以来のプロジェクトによってHIV/エイズ罹患率を10%程度までほぼ半減させるなど、一手一手の着実な取り組みがひとびとの生活の向上につながっています。
エイズ母子感染防止プログラム卒業式に参加
そしていま、新たに取り組まれているのが観光業です。いまこの村では、風光明媚な自然環境とそこで育まれた文化という資産を活かして、エコ・ツーリズムを振興しようと準備を進めています。村の図書館には、伝統的な器具や楽器などを陳列した、ちょっとした博物館ができています。また、エコ・ツーリズム・サイトの整備も進んでいます。見晴らしのよい岩場など通りながらハイキングをしてみると、しばし日本での生活を忘れ、とても爽やかなよい気持ちになれました。2015年1月にはウェブサイトで情報発信できるよう、制作を進めているところだといいます。みなさま、ぜひいちどサウリ村のエコ・ツーリズムを検討されてみませんか?ここは、ひとと自然の調和のとれた素晴らしい場所ですよ。