マラウイサイクロン被災支援事業を振返って

SPJではジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成の下、マラウイの大洪水被災者支援として、2019年5月17日から7月22日にかけて「マラウイ共和国ゾンバ県における洪水被災者への緊急物資配布事業」(第1期)を実施し、8月9日から11月8日にかけて「マラウイ共和国ゾンバ県における洪水被災者への食糧・リカバリー物資配布事業」(第2期)を実施しました。

 2019年3月4日に発生しましたサイクロン・イダイによってゾンバ県では家屋が倒壊したり、作物が流失したりするなどの大きな被害が出ました。そこで、SPJでは約5カ月間(第1期+2期)、ゾンバ県でマラウイサイクロン被災支援事業を実施しました。ゾンバ県に現地駐在員が赴き、実際に半倒壊した家屋を確認しましたところ、被災者宅はトタン屋根やレンガ造り、木造作りの簡素な家が多く、サイクロンで屋根が吹き飛んでしまったり、壁が崩れたりしていました。また、サイクロンでメイズなどの作物が流出してしまいました。さらに、場所によっては元々土地が痩せており、作物が育ちにくい所も散見されました。

サイクロンで屋根が崩れてしまった被災者宅

サイクロン被災者の衣食住に関わる基本的な生活を維持するために、現地で食糧支援などの緊急援助の必要性を強く感じましたが、毎年サイクロンがやって来ることが分かっている状況の中で、どのようにして住民が主体的にサイクロンの災害に対応していくのかも課題であると実感しました。そのような状況で、第二期目からはメイズや米、豆などの約1カ月分の食糧をNkapita の被災1,060世帯に配布したことに加えて、屋根の補修材としてターポリンとブランケットをMwambo の被災550世帯に配布できたことは良かったです(1期目の事業では、裨益者に食糧物資のみを配布)。また、ターポリンの配布前には裨益者550世帯を対象にしたワークショップも開催し、ターポリンの活用方法の検討や今後サイクロンが発生しました時の避難経路などを確認することができました。日本国内のNPO法人の活動でも課題となっていますが、地域コミュニティへの一方的な援助はむしろ弊害になることも多く(住民の主体性が育たない)、そこに住む住民が地域に対して責任を持ち、地域の問題や課題を住民の手で解決していく姿勢を養うことが大切です。ワークショップでは、裨益者と一緒にサイクロン災害時の防災マップを作製し、サイクロンで洪水が発生する場所を確認したり、洪水や暴風雨にも負けない頑丈な建物に避難するためにはどの経路を歩いて行けばよいのかを確認したりするなど、サイクロン被災時に住民が主体的に動ける一助となるようなワークショップを心掛けました。

Mwamboでのワークショップの様子(防災マップ作成)

 国際NGOの現地駐在員の魅力の一つは、現地の人たちと一緒に仕事したり活動したりする中で、現地の人たちの価値観や考え方、生活などに直接触れることができる点です。事業モニタリング中(2期目)にこんなことがありました。

 ゾンバ県のMbukwiteのMatwika村の裨益者が、村長から食糧物資の半分20kg(メイズ12.5kg、米5kg、豆2.5kg)を許可なく没収されてしまい、村長が村にいる他のサイクロン被災者に食糧物資を配布するという問題が発生しました。そのため、裨益者からVCPC Chairman(地域コミュニティの取り纏め役)に連絡がありましたので、Mbukwiteの群長及びVCPC Chairman及びVCPCメンバー、Matwika村の村長と裨益者を招集し、コミュニティ会議を開催しました。この会議の席上で村長は自らの非を全面的に認めて、10月18日(金)に村長自らがメイズ12.5kg及び米5kg、豆2.5kgを購入し、裨益者に賠償しました。また村長から裨益者への食糧物資の引渡しは、私と現地スタッフ、GVH(群) Mbukwiteの群長及びVCPC Chairman、VCPCメンバー立会いの下で実施されました。

村の係争案件がどのように処理されているのか。このようなコミュニティ本位の活動に直接的に関わることができるのは国際NGOの現地駐在員の仕事の醍醐味だと考えています。

村長から賠償の食糧物資を受け取った裨益者と立会人の一人(現地スタッフ)
食糧物資の引渡しをもって村長と裨益者との和解が成立した。写真左が立会人の一人である
VCPCメンバー。中央が村長。VCPCメンバーと握手しているのが裨益者

今回のマラウイサイクロン被災支援事業では、事業モニタリングを通して多くの裨益者からヒアリングしました。さらに事業モニタリングでは、次の事業に繋がる現地ニーズもヒアリング調査しました。またゾンバ県で事業を実施する機会がありましたら、事業モニタリングで集めました住民の声(ニーズ)もしっかりと事業に反映できればと思います。

ターポリンとブランケット配布時に裨益者とスタッフの集合写真

最後になりますが、約5か月間にわたり、ご協力頂きました関係者の皆様並びに、ご応援頂きました皆様へ感謝を述べたいと思います。

本当にありがとうございました!!