ミレニアム・プロミス・ジャパン名古屋事務所主催の第一回研究会の報告です。名古屋大学の会場へ30名近くの方々がお集まりくださいました。山田先生から、アフリカに関する全般的なお話をいただき、初心者にわかりやすく解説していただきました。
テーマ: 「アフリカのいまを知ろう」
日時: 平成21年1月24日(土) 午後1時~3時
場所: 名古屋大学大学院 国際開発研究科
講師: 山田肖子氏
名古屋大学大学院国際開発研究科准教授
【写真】左から、講師の山田肖子先生、講演する山田先生、会場の様子
メディアで報じられるアフリカ
アフリカ大陸の53カ国のうち、北アフリカを除いた47カ国は貧困などの問題をかかえ、最近のメディアではジンバブエの超インフレ、ケニアの大統領選挙後の内戦(部族対立)、資源をめぐるイスラムと非イスラムの利権の争いであるスーダンのダルフール紛争、エイズなどが報じられている。
紛争と多様性
アフリカは多様な世界で、そのことはアフリカの民族・政治紛争の原因ともなっている。アフリカ分割会議とも言われる1878年のベルリン会議で、ドイツ、フランス、ベルギー、イギリス等のヨーロッパ諸国がアフリカ諸国の国境を決めてしまった結果、言語分布と国境の分布が重ならず、例えばエチオピアには150の民族がいる。
このため、「誰のグループが一番力を持つのか」が重要な問題になり、さらに資源をめぐる争いが民族の争い、政治対立と結びつきやすい。
家族のしくみが国家レベルになってしまう家産制国家では、君主が民族の代表として国の代表になる。民族のために行う政治は、国民全てのために行う政治とは異なる。
税収
税収が少ないことも援助に依存するアフリカ諸国の問題のひとつだが、狩猟採集民は定住しないため、税の徴収や調査の対象とならない。
宗教
宗教も多様で、イスラム教はアラビア半島から海を越え、ラクダに乗ったキャラバンの商人の移動とともに伝わったため、アフリカを横断して伝播した。一方キリスト教は植民地時代の港から海に沿って広まっていった。
日本との関係
日本はアフリカから携帯電話や半導体の原材料となるレアメタルを輸入し、輸入量は少しずつ増えている。またチョコレートのガーナからの輸入など。一方で、輸出では中国やインドにかなわない状況。繊維・加工食品は中国産の方が安いため。
歴史的には、織田信長の時代にアフリカ人が信長に献上され、本能寺で一緒に死んだ側近のひとりであったと言われている。野口英世はガーナで黄熱病研究で亡くなった。また日本人はアパルトヘイト下の南アフリカで名誉白人であった。
日本からアフリカへのODAは増えており、2008年にはTICAD(アフリカ開発会議)を開催し、福田首相が援助倍増を言うなど、日本におけるアフリカの重要性は大きくなっている。
これからの援助
今後日本からアフリカに対して行う援助については、アフリカ社会を知らずに行うことは危険。アフリカは多様な世界で、それぞれに価値観も異なり、貧困の原因も対策も異なることを理解する必要がある。
例えば、一つの作物の収穫量が上がるといった対策を示しても、ひとたび天候の不順が起これば一つの作物では全滅の恐れがあり、生きてゆくためにはいろいろな作物を少しづつ作る方が理にかなっているといった現地の文脈を理解する必要がある。アフリカの人の腑に落ちるモデルなら広がる。アフリカの論理をどこまで取り入れられるかが鍵。
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第1回名古屋支部研究会レポート.pdf