第28回MPJ研究会のご報告(JICA中村様ご講演)

講師中村氏皆さんこんにちは!MPJユースの会代表の福谷です。
少し前になりますが、6月30日、文京シビックセンターで行われた第28回MPJ研究会にて、JICAアフリカ部の中村恵理様にお話を伺う機会を得ました。
中村様は現在独立行政法人国際協力機構(以下JICA)のアフリカ部にてケニア・ソマリア向けの協力を担当されています。今回は中村様がこれまで経験されてきた南スーダン、ダルフール(スーダン共和国)、ケニアなどでのお話を中心に聞かせていただきました。以下では、中村様に頂いたレジュメの国別のテーマに沿ってお話を紹介します。

1.国家建設のダイナミクスと長い長い道のり@南スーダン
2011年に独立を果たした南スーダンでは、新しい国家を建設していくためのインフラ整備の重要性を実感されたそうです。道が無ければ人も資材も地方へ届けることは出来ず、その事態の深刻さを、現地の様子を映した写真で私たちも感じることができました。また、紛争終結直後の混乱した社会の中で、内戦の再発を防ぐには、平和の配当を地域や部族の偏りなく、幅広く実感してもらうことが重要です。そのためにJICAは若者の職業訓練や、小学校の先生の再トレーニングといったプログラムを通じて、人々が生活費を得るために再び紛争に加担してしまうことを防ごうとしています。こうしたJICAが実施するプログラムは、「その国が最低限機能するために最低限必要な機能とは何か?」という観点から、現地と必要な機能を役割分担しながら進められています。特にJICAは、その中でも中長期的な事業に強みを持ち、農業開発などの援助事業を行っています。
2.民間セクターこそが開発の担い手@ダルフール(スーダン)
ダルフールに関しては、紛争影響下ではありながらも、日常の生活を送る市井の人々の様子を写真で見せていただき、意を突かれた思いでした。歴史的に、ビジネスが得意な国民性で、人々はハイリスク・ハイリターンの商業取引を行っていますが、今後の発展を考えると、現地での雇用を生む民間セクターをいかに伸ばしていくかが重要だということでした。
3.東アフリカの大国の見据える未来@ケニア
東アフリカ5カ国の玄関口であるモンバサ港を抱えるケニアでは、港湾整備や日本の商社と協同での地熱発電所の建設を通じて、更なる経済成長が促進されています。また、そうした成長の成果を全国民と分け合うという観点から、日本の国民皆保険制度の実現に向けた体制整備のための技術協力も行っています。そうした経済成長の一方で、ケニア国内にはソマリアからの難民コミュニティもかなりの数が形成されており、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)と協力しての物資の支援も行われています。
現在、中村様はケニア・ソマリア向けの協力を担当されていますが、ソマリアは依然としてテロ組織の活動が沈静化しておらず、安全確保が難しいため現地に行かれたことは無いそうです。現在JICAによる面的な展開は行えておらず、今後は他の国際機関との協力や日本での研修事業を通じて、若年層が海賊やテロ組織に参加してしまわないよう、雇用の機会を提供していくことが重要になります。
また質疑応答の時間では、アフリカにおける中国の進出に関して、日本とは異なる援助方式であることについて、それぞれの国の強みを生かして上手くお互い利用し協力し合えればいいというお話があり、今後の国の援助機関同士の協力の重要性を感じました。
一括りにアフリカと言っても、現在も内戦状態の国もあれば、ケニアのように大統領自ら「もう援助は不要だ」というような発言をするほどに発展し、自信をつけてきた国もあるということを今回お聞きし、改めてアフリカでの国際協力の複雑さを実感しました。
個人的には、このようにアフリカの中でも特に大変な現場を多く経験されてこられた中村様ですが、ご本人は非常に穏やかな方で、その後の懇親会等も通じて、相手の意見に耳を傾けてお話されることを大事にされている印象を受けました。そしてそうした姿勢こそが、多くの援助機関や関係者と協力して援助計画を作り上げていく国際協力の現場では、最も重要な要素なのではないかと感じました。

中村様 プロフィール
独立行政法人国際協力機構(JICA)のアフリカ部にてケニア・ソマリア向けの協力を担当。国際協力銀行(インド向けのインフラ開発及び民間企業向けの海外投融資業務を担当)、JICAスーダン事務所(若年層向けの職業訓練や農村開発の事業を担当)、世界銀行民間・金融セクター開発局(南北スーダンの民間セクター開発を担当)を経て現職。

MPJユースの会
代表 福谷佳苗


ミレニアム開発目標は歴史上最も成功した貧困撲滅運動 ― 国連「MDGs報告2015」が発表

07-01-mdgs-07国連より「ミレニアム開発目標(MDGs)報告2015」が発表され、潘基文国連事務総長は「極度の貧困をあと一世代でこの世からなくせるところまで来た」と、2000年に発表されて以降、貧困削減のための開発の枠組みとして用いられてきたMDGsの成果を強調されました。
(国際連合広報センター 7月7日プレスリリースより)


「ミレニアム開発目標報告2015」では、MDGsは、これまでの歴史で最も成功した貧困撲滅のための取り組みであり、その成功は世界規模での取り組みが機能していることの証明であると評価しています。
世界およびサハラ以南アフリカ地域では以下のような達成を遂げました。

ゴール1:極度の貧困と飢餓の撲滅
→貧困率が半分以下に減少。開発途上国の半数に近い人口が一日1.25ドル未満で生活していた1990年に比べ、2015年にはその割合が14%まで減少した。

ゴール2:普遍的な初等教育の達成
→2000年から小学校の児童の就学率が著しく向上。
開発地域における小学校の純就学率は、世界では91%(2015年)に改善した。
その最大の増加はサハラ以南アフリカで見られ、1990年時点の52%から2015年時点では80%に改善した。

ゴール3:ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
→すべての開発途上地域は初等、中等、高等教育で男女格差を解消。
サハラ以南アフリカでは、2000年時点では100人の男子に対し女子85人の割合だったが、現在は100人の男子に対し93人の女子が通学しており、より多くの女子が就学するようになった。

ゴール4:幼児死亡率の引き下げ
→予防可能な疾病による幼児死亡数の著しい低下は、人類史上で最も偉大な成果。
サハラ以南アフリカでは、5歳未満の幼児死亡率が、年0.8%の減少から年4.2%の減少へと改善ペースを加速。このペースは、1990-1995年と比べて5倍以上の急速な改善を見せた。

ゴール5:妊産婦の健康状態の改善
→妊産婦の健康状態に一定の改善が見られた。1990年以降、妊産婦の死亡率は45%減少し、これらの多くは2000年以降に起こっている。
サハラ以南アフリカでもこの20年で49%減少した。

ゴール6:HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止
→HIV感染者が世界の多くの地域で減少。マラリアと結核の蔓延が止まり、減少した。
2004年から2014年までの間に、9億以上もの殺虫剤処理をされた蚊帳が、マラリアが風土病となっているサハラ以南アフリカの国々に配布された。この結果、5歳未満の子どものマラリアによる死亡率を69%減少させた見込み。

ゴール7:環境の持続可能性の確保
→安全な飲み水とオゾン層保護に関する目標を達成。2015年には世界人口の91%が改良された飲料水源を使用しており、目標は期限である2015年の5年前に達成された。

ゴール8:開発のためのグローバル・パートナーシップの構築
→ODA、携帯電話加入者数、インターネットの普及における世界的な進歩を達成。


残された課題としては、以下の問題が挙げられています。

■男女間の不平等が続いている。就職率や政治参加で格差が残る。
■最貧困層と最富裕層、都市部と農村部の格差が存在している。最貧困層家庭の子供は就学率が1/4と低く、5歳未満の幼児死亡率も2倍高い。
■気候変動と環境悪化が達成すべき目標を阻んでいる。二酸化炭素排出量は1990年以降50%以上増加している。
■紛争は人間開発の最大の脅威である。脆弱な国、紛争の影響を受けている国々は、貧困率も高い。
■数百万人の貧しい人たちは、未だに基本的サービスへのアクセスがなく、貧困と飢餓の中で暮らしている。

出典:
国際連合広報センター 「ミレニアム開発目標(MDGs)報告2015」の概要
http://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/15009/
国際連合 地域別ニュースリリース(サハラ以南アフリカ)
http://www.un.org/millenniumgoals/2015_MDG_Report/pdf/MDG%202015%20PR%20Regional%20SSA.pdf


「ジェフリー・サックス氏と考える持続可能な開発と企業の社会的責任」(7月30日@東京財団)を開催します!

来る7月30日(木)、ジェフリー・サックス教授をSachs2お招きして「『東京財団CSR白書2015』出版記念 ―ジェフリー・サックス氏と考える持続可能な開発と企業の社会的責任」(主催:公益財団法人東京財団、協力:公益社団法人日本経済研究センター、認定NPO法人ミレニアム・プロミス・ジャパン)を開催いたします。

フォーラムは2部構成となっており、第1部ではサックス教授にポスト2015開発アジェンダが企業社会にもたらす新たな課題と可能性について基調講演をいただき、その後のパネルディスカッションにも加わっていただきます。
第2部では企業の方を中心に『東京財団CSR白書2015』に収録された分析・事例報告が行われます。

【日 時】7月30日(木)13:30~17:00(受付13:00~)
    ■第1部「持続可能な開発と企業社会の可能性」 13:30~15:00
    ■第2部「社会に応える『しなやかな』会社のかたち」 15:10~16:40
    ■ネットワーキング 16:40~17:00
【会 場】日本財団ビル2階 大会議室(東京都港区赤坂1-2-2)
【言 語】日英通訳付
【参加費】無料

詳細および参加申し込みは、
東京財団ウェブサイト(http://www.tkfd.or.jp/event/detail.php?id=240
をご覧ください。
みなさまのご参加を心より待ちしております。


日本政府、ケニア、ナイジェリア、ルワンダのミレニアム・ビレッジ支援に500万ドルの無償資金協力を供与へ

日本政府のミレニアム・ビレッジ・プロジェクト(MVP)に対する500万ドル(5億9,600万円)の無償資金協力について、ミレニアム・プロミスおよび同プロジェクトの執行機関である国連プロジェクト・サービス機関(UNOPS)から発表されました。ニュースリリースを翻訳しましたのでどうぞご参照ください。
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コペンハーゲン発 2015年7月3日
当支援はケニアのサウリ村及びデルトゥ村、ナイジェリアのパンパイダ村、ルワンダのマヤンゲ村の4つのミレニアム・ビレッジ・プロジェクト支援のために活用されることになっており、日本政府はアフリカにおける平和の定着と紛争の再発防止に引き続き努めていく姿勢を示しました。
「世界には依然として、様々な理由のために開発の恩恵に預かれない人々がいます。この状況を打破するために、日本政府はODA(政府開発援助)における「人間の安全保障」の重要性を改めて確認しました。」と篠田欣二在デンマーク臨時代理大使は述べています。
さらに、「サハラ砂漠以南のアフリカ地域は21世紀に入り、めまぐるしい経済成長を遂げました。しかしながら依然として、アフリカ大陸の多くの人々が極度の貧困に苦しんでいます。日本国民と日本政府はケニア、ナイジェリア、ルワンダのミレニアム・ビレッジ・プロジェクトを支援することに大きな喜びを感じています。プロジェクトの目標を達成するためには、関係機関一同協力していく必要があります。」と篠田臨時代理大使は述べられました。
この新たな支援金は日本のこれまでのミレニアム・ビレッジ・プロジェクトへの支援を踏まえて拠出されたものです。
2006年から2011年の間、日本政府は国連開発計画(UNDP)と連携している国連人間の安全保障基金(UNTFHS)を通して2,000万ドルを超える援助を行い、9つのミレニアム・ビレッジ・プロジェクト立ち上げに極めて重要な役割を果たしました。日本政府はUNDPとの連携のもと、これまでベナン、カメルーン、マダガスカル、モザンビークに支援を拡大し、これらの国での新たなミレニアム・ビレッジ・プロジェクトの立ち上げにも貢献しました。
「私たちはミレニアム・ビレッジ・プロジェクトを支える多大なる支援に対して、日本国、並びに安部総理大臣に深く感謝申し上げます。」とミレニアム・ビレッジ・プロジェクトの責任者であるジェフリー・サックスは述べています。
さらにサックス教授は、「今回の支援によって、ケニア、ナイジェリア、ルワンダの村落地域は、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成を目指して行ってきた、貧困への取り組み、飢餓の削減、所得の向上、病気との闘いに関わる10年に渡る取り組みを最後までやり遂げることができるでしょう。支援を受ける3ヶ国の政府は、MDGsを変わらず支援していくことを今回示した日本に対して、深く感謝しています。日本は今回の支援によって、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国における、持続可能な開発、人間の安全保障、極度の貧困の撲滅に貢献していくグローバルリーダーとしての姿勢を、改めて示しました。」と述べています。
また国連プロジェクト・サービス機関(UNOPS)事務局長のグレテ・ファレモ氏(Ms. Grete Faremo)は、「ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトがサハラ砂漠以南のアフリカ諸国の模範的な役割として、各々の開発に向けての問題や、農村部での貧困の完全撲滅に対して建設的な取り組みを行っていることに対して、支援を続けることができることに誇りを感じています。日本政府による今回の支援は、その方面において次のステップへの移行に貢献するでしょう。」と話しています。

ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトは、ミレニアム・プロミスがコロンビア大学地球研究所と、主導的な執行機関であるUNOPSとともに実施しているプロジェクトです。このプロジェクトの目的は、低所得のサハラ砂漠以南のアフリカの地域において、10年という期間をかけて、国連ミレニアム・プロジェクトで推奨される予算内で低コストかつ科学的根拠に基づいた介入・実践による包括的な支援を行い、ミレニアム開発目標の達成に向けて前進することが可能であることを示すことです。日本からの今回の支援は、上記4つのプロジェクトサイトにおいて、9年目のプロジェクト事業のために活用されます。

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原文はこちらからご覧いただけます。
https://www.unops.org/english/News/Press-releases/Pages/Government-of-Japan-Grants-5-million-to-Support-Millennium-Villages-Project-in-Kenya-Nigeria-and-Rwanda.aspx
日本外務省の報道発表ページはこちら
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_002267.html

翻訳:MPJユースの会 
   土屋 潔浩


ウガンダ・ルヒーラ村の小学校支援事業が完了しました!

小学校校舎ミレニアム・プロミス・ジャパンでは、昨年度「世界の人びとのためのJICA基金」によるご支援をいただき、2014年11月から2015年6月にかけて、ウガンダのミレニアム・ビレッジ(ルヒーラ村)にあるリャミヨンガ小学校と付属幼稚園の支援を実施しました。
リャミヨンガ小学校は、MPJがアミティエ・スポーツクラブとともに2010年に建設した小学校で、MPJでは建設後も、衛生的なトイレ、ソーラークッカーを導入した給食設備や太陽光発電による充電システム、小学校の机といすなどを提供し、継続的に支援してきました。学校側でも、校舎の外壁に理科で学習するヒトの器官のイラストを描いたり、国旗掲揚台を作ったりと、年々充実させ、現地ではモデル校となっています(上写真参照)。
今回の支援では、以前から要望のあったもののなかなか実現できずにいた付属幼稚園の園児たち用のテーブルと椅子をはじめ、小学校の授業で使用するパソコンや教師の通勤用自転車の寄贈、充電システムのバッテリー交換、手洗い用の水をためる雨どいの設置を行いました。
赤ちゃんを連れて登校する女の子ここルヒーラ村に限らず兄弟数の多い農村部では、幼い兄弟姉妹の面倒を見るのは女の子の役目です。リャミヨンガ小学校の女子生徒の中には、赤ちゃんをおんぶして登校する子も少なくなく、実は小学校建設時から幼稚園の建設も求められていました。小学校併設の幼稚園(小学校の旧校舎を利用)の教育環境を整えることで、そのような幼い兄弟の世話のために学校へ来られない女の子の就学をサポートすることができます。
幼稚園では、園児たちが土の床に敷物を敷いて授業を受けたりお昼寝をしたりしていましたが(2014年10月視察報告をご参照)、お昼寝する園児たち今回、幼児用のテーブルといすが入ったことで、テーブルを囲んでグループ学習ができるようになりました。幼稚園生たちもひとり1つずついすのある教室で歌を歌ったり、友達と一緒に遊んだり、給食を食べたりするのがお気に入りです。
小学校ではパソコンを使った授業が生徒にとても人気となり、使わないで授業をしようとすると生徒から教師へ要求してくるほどだそうです。社会科ではウガンダの地理を地図や写真で詳しく調べることができたり、理科では植物のしくみをアニメーションで示すことができたりするので、約半分の生徒が自分の教科書を用意できない中、パソコンを活用することで生徒の興味を引いた授業が可能となりました。実はパソコンを使った授業は近くの学校には例がなく、教師も初めてパソコンを使うので、教師同士で教えながら授業に役立てています。
生徒たちの親も、子どもを環境の整った幼稚園や小学校へ通わせていることを誇りに思い、また、ご支援くださった日本の皆様にとても感謝していました。
この支援を通じて、子どもたちが皆、小学校を修了することができるよう願っています。
幼稚園生と新しい机いす 自転車 パソコンを触る生徒 雨どい