【衛生管理フォローアップ研修開催】

現在、SPJが実施している「バオバブ製品の製造販売を通じた農民グループの自立支援プロジェクト」では5つの農業組合を支援しており、それらの組合は「原材料供給担当」と「製造販売担当」の2つに別れています。「原材料供給担当」組合はバオバブが多く自生する地域の農村部に位置し、バオバブの実から作られるパウダーとオイルの原材料となるバオバブの種を「製造販売担当」組合に販売しています。

「製造販売担当」組合はマラウイの都市部にあり、首都のリロングウェとマラウイ最大商業都市であるブランタイヤにそれぞれ位置しています。「製造販売担当」組合は搾油機でバオバブの種を搾油し、バオバブオイルを作り、またバオバブパウダーもパッケージングして市場に販売しています。

2つの担当に分けている理由は、バオバブオイルやパウダーのコアターゲットは中高所得者層のマラウイ人であり、定職を持ち、月給を受け取っている人たちになるので、政府機関や企業が集まる都市部に集中しているからです。

4月後半、バオバブが多く自生するマンゴチ県にある「原材料供給担当」組合である、Zokoma CooperativeとWokha Cooperativeの2組合に対して、2年次にも実施した衛生管理研修のフォローアップ研修を実施しました。バオバブの収穫時期は5月~6月にかけてなので、今年の収穫時に併せて、原材料の衛生管理の強化をすることが目的です。

今回はZokoma Cooperativeで実施した研修の様子をご報告します。研修の講師には、実際に彼らから商品を購入しているMaluso Cooperative Unionより製造担当スタッフを講師として招き、1日間のプログラムで実施しました。

【プログラム①】公衆衛生についてのおさらい

まずは公衆衛生についてのおさらい講義を行いました。感染経路には人為的なもの(手の傷や髪の毛など)と環境的なもの(害虫、土壌、水など)があること、それを防ぐために何が必要なのかなどを学んでいきます。

講師のMiciusによる講義

【プログラム②】5S改善についてのおさらい

続いて、5S改善についてのおさらい講義を行いました。5S改善とは、日本の自動車企業TOYOTAが発祥であり、製造工程における無駄やムラをなくして作業効率を高めるために、作業環境を改善させていくというメソッドです。「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の5つのSを基に改善を行っていくことから「5S改善」と呼ばれています。今回は実習として、実際の保管庫の1つを見直し、5つのSに沿って環境改善を行いました。

(改善前)モノが地面に直接敷いたブルーシートの上に置かれており、不必要なものがそのまま保管されている状態であった。

(改善中)保管庫内の物品を全て出し、必要なもの、不必要なものに分けて分類し、必要なもの以外は処分します。また、保管庫内を清掃します。

(改善後)使われていなかったドア板を活用し、地面にブロックを並べた上でドア板を置き、もの置台にしました。お金をかけずにアイディアと工夫で衛生環境も改善し、必要なものが取り出しやすくなりました。

【プログラム③】作業工程における衛生管理の実習

午後には、実際に作業工程における衛生管理方法について実習を通して学んでいきます。午前中の講義内容を基にバオバブの実の選定作業を実習として行いまいた。

まずは作業場の清掃、使用する道具の洗浄を行い、また石鹸での手洗いを徹底します。

まずは作業場の清掃、使用する道具の洗浄を行い、また石鹸での手洗いを徹底します。

マラウイでは、ゴム手袋は都市部の薬局などでは販売されているものの、値段が高く、村落部では手に入りません。そのため、ゴム手袋の代用品として、村落部でも販売されている小型のビニール袋を両手に装着して作業を行うことにしました。

いよいよ、収穫されたバオバブの実の選定作業です。バオバブの実を広げ、殻や繊維な余分なものを取り除き、傷んだ実などがないかも合わせてチェックしていきます。

最終的に選定した実はきれいな容器に入れて、保存してきます。

日本の環境で考えればとても単純なことですが、マラウイの生活においては、例えば、キッチンが野外にあり、ブロックを並べただけの3点かまどで調理するというのが日常ですので、衛生管理に関する意識は日本よりもかなり低いのが現状です。 もちろん、実際にオイルやパウダーを製造する場合には、適切な場所で、そして方法で実施していますが、今回の様に原材料を取り扱う際にも衛生管理の徹底をしていくことで、商品の品質向上に繋がっていきます。


2019年5月21日「顧みられない熱帯病(NTDs)の根絶を目指す議員連盟」の設立総会が開催されました。

顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases: NTDs)とは世界保健機関(WHO)が定める20の疾患の総称のことで、熱帯途上国地域の149の国々に暮らす中低所得者層を中心に約10億人もの人々が苦しんでいると報告されています。NTDsは貧困による劣悪な衛生環境などが主な原因となって蔓延し、これらの疾患にかかると、重度の身体障害が残る場合もあり、生涯にわたる身体的、精神的影響を及ぼし、経済成長の妨げにもなっています。そのため、適切な時期に適切な治療を受ければ治癒が可能なのにも関わらず、貧困のためにそれができず、病気のためにさらなる貧困に陥るという負のスパイラルが発生しています。

日本政府はユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を推進することで国際社会での保健分野におけるリーダーシップを発揮してきました。人間一人ひとりの命、生活、尊厳を守るという「人間の安全保障」やUHCの実現のためには、NTDsの克服が欠かせません。

こうした機運の高まりをうけて、元厚生労働大臣の塩崎恭久自民党衆議院議員と秋野公造公明党参議院議員が呼びかけ人なり、2019年5月21日に「顧みられない熱帯病(NTDs)の根絶を目指す議員連盟」が設立されました。設立総会には、議員関係者、政府系機関、大学、企業、市民社会等から100名近い参加者があり、立ち見が出るほどの盛況ぶりとなりました。

同総会では、秋野公造参議院議員が呼びかけ人を代表してご挨拶をされたのち、司会進行役を務め、鷲見学 外務省国際保健政策室長からNTDsに関する簡単な概要説明がなされました。その後、国光あやの 自民党衆議院議員、小倉 將信自民党衆議院議員らから一言ずつご挨拶をいただきました。また、「顧みられない熱帯病(NTDs)の根絶を目指す議員連盟」の名称、規約の承認を受けたのち、最後は塩崎恭久衆議院議員より「NTDsを日本として前面に取り上げて、製薬企業やNGO、医療界などと連携しながら貢献する必要がある」と指摘され、NTDs対策の重要性を訴えました。

NTDsのアドボカシー活動を行っているSDGs・プロミス・ジャパン(SPJ)の鈴木りえこ理事長も、秋野参議院議員のご指名を受け、NGO側から、国会議員の皆さまが積極的にNTDs対策の推進を表明されたことに感謝の気持ちを述べさせていただきました。

国境がなくなりつつある国際社会では海外から感染症が国内に入り込む可能性も高まり、NTDsは私たちの生活にも無縁ではありません。

NTDs対策が今後の国際社会で重要課題になることを、この設立総会で改めて認識しました。