ガーナの職業訓練校建設開始式典にガーナ政府・教育大臣なども参加

SDGs・プロミス・ジャパン(SPJ)では、すでにお伝えしていますように、2023年3月に外務省NGO連携無償資金協力(N連)の採択を得て、ガーナのアシャンテ(Ashanti)州アマンシエ・ウエスト(Amansie West)のマンソ・ンクワンタ(Manso Nkwanta)にて、職業訓練校建設運営支援事業を開始しました。

このたび、事業開始を祝う式典(Sod-Cutting Ceremony: 日本のいわゆる「鍬入れ式」のようなもの)が事業地で開催され、SPJ理事長・鈴木りえこが参加しましたので、概要を簡単にご報告いたします。

鈴木理事長は、まず首都アクラで駐ガーナ日本大使館・望月寿信大使、ガーナ政府の教育大臣Dr. Yaw Osei Adutwum氏、JICAガーナ事務所の鈴木桃子所長などを表敬訪問しました。そのほかにも、日本企業を数社訪問し、当事業概要をご説明させていただき、皆様へご指導、ご協力をお願いしました。

鈴木理事長は、マンソ・ンクワンタの事業地に到着後、オマンヘネを表敬訪問、週末にはMPA Ghana(Millennium Promise Alliance Ghana:SPJの連携NGO)所有のラジオ局(Promise Radio 105.1)にて、現地の人々へ職業訓練校の計画を説明するため、生放送でインタビューを受けました。インタビューは現地事業統括者スタンが現地語(Twi)に通訳し、MPA Ghanaジェネラル・マネージャーのエリック氏も補足の説明を行いました。その後、視聴者から寄せられた質問(対象の年齢ほか)にも答えました。

この地域はアシャンテ州の州都クマシから車で3時間ほどにある貧しい地域のため、失業率が高く、金の違法採掘に関わる若者も少なくないため(15歳から35歳の若者の約30%)、現地の人々の間では職業訓練校に関する関心が高いようでした。

式典には、地元の人々約300人が参加し、地元の伝統的指導者オマンヘネ(Nana Bi Kusi Appiah/ナナ・ビー・クシ・アピア2世)、前述のガーナの教育大臣、地元選出の国会議員・George Takyi/ジョージ・タチ氏、DCE (District Chief Executive:地域役所代表)・Nii Lareth Ollenu/ニー・ランテ・オレヌ氏に鈴木理事長も加わり、それぞれ挨拶を述べ、多くのメディで報道されました。

鈴木理事長は、2005年以降、この地域(旧ミレニアム・ビレッジ:Bonsaaso)には5回ほど訪れていますが、前回の訪問(2022年6月)から1年余りで地域が急速に発展していることに驚き、非常に喜んでいます。

アクラでは、ガーナの職業訓練校を統括するDr. Fred Kyei Asamoah(Director General, Commission for Technical and Vocational Education and Training-CTVET)ともご面談させていただき、将来的には職業訓練校の国有化を目指し、持続可能な状態を確保するためのご協力をお約束いただきました。

● これまでの関連ブログ
2023.4.27: 隈研吾氏 とSDGs・プロミス・ジャパン: ガーナにおける職業訓練校建設・運営支援事業に着手
2023.3.27: ガーナにおける職業訓練校建設・運営事業に関して、外務省のNGO連携無償資金協力(N連)を締結
2022.8.31: 隈研吾氏、「アフリカの魅力とインパクトを語る」 ~アフリカへの想いと建築への原点もお伺いしました!~
2022.7.13: ガーナを訪問しました!


マラウイで3年間実施してきたバオバブ事業が完了しました!

2017年2月から約3年間にわたって実施してきた事業「バオバブ製品の製造販売を通した農民グループの自立支援プロジェクト」の完了に伴い、11月27日、東京都内で事業完了報告会を開催しました。報告会では、現地事業責任者を務めたSPJ職員の青木より、プロジェクトの案件形成が行われた背景や現地における課題、活動内容とその成果などを報告しました。当日は約20人にご参加頂き、報告会完了後には、希望者による懇親会が開催されました。

今回は、当報告会での報告内容の概要をお伝えします。

【事業期間】2017年2月~2019年12月

【事業予算】約4千950万円

【プロジェクトの背景・目的】

 マラウイでは、産業貿易観光省主導のもと、2003年よりJICAの協力を受けてOVOP(One Village One Product:一村一品)プロジェクトが開始され、JICAもそれ以降13年間支援してきた。OVOPのプロジェクト事務局(現在は産業省庁の内部編成によりDepartment of SMEs(Small and Medium Enterprises)内のValue Addition Divisionとなっている)は、マラウイ国内に散在している111のOVOP加盟グループに対して、事業や組織運営の改善のための指導を包括的に実施している。しかし、グループ設立や工場設置などの初期支援、共通的な組織運営に対しての研修指導は行っているが、各商品の市場需要に即した製造販売の提案など、個々のグループに対してきめ細やかな支援は不十分となっていた。また、主として生産に主眼が置かれているため、販売先などの市場が確立できず、継続的な収益が確保できないなどの課題があった。

その様な環境下、このOVOP産物品の一つであるバオバブオイルは、優秀な美容オイルとして欧米を中心に注目され、近年その市場価値が高まっており、バオバブパウダーも様々な栄養素を含む食材、スーパーフードとして注目されている。そこで、当プロジェクトでは、バオバブ関連商品の製造販売をモデルとして、市場のニーズを捉えた適切な商品の販売方法、広報などを含めた販路開拓について助言し、市場に重点をおいたビジネス展開の重要性を示すと共に、OVOPプロジェクト全体の発展を促すことを目的とした。

また、OVOPプロジェクトでは、加盟する農村地域の農民グループが製造から販売流通までその全てを担うことを目指して研修を行っているが、実際に農村部の農民が都市部での店舗に対して販売交渉を行うことや、スーパーマーケットなどの大型店舗が求める品質(商品の安全や衛生管理、包装基準など)に対応することは極めて困難であり、ビジネスとしては現実的ではなかった。

 当プロジェクトでは、バオバブ商品の販売先を市場ニーズのある都市部に絞り、都市部において商品の製造販売を担当する組合と、村落部において原材料の供給を担当する組合とに分け、それぞれの環境、組織運営能力に応じて継続可能な事業の形を作った。その後、それらを繋げるネットワークを構築することで、OVOPプロジェクトによって形成された基盤を活用しながら、バオバブビジネスを1つのモデルとしてバリューチェーンを作り上げることを目指した。

【プロジェクト対象者】

直接的な裨益者:総数1,373名

①Maluso Cooperative Union 1,021名(Mitundu, Lilongwe県:商品製造販売担当)

②Home Oils Cooperative 25名(Ndirande, Blantyre県:商品製造販売担当)

③Wokha Cooperative 32名(Monkey Bay, Mangochi県:原材料供給担当)

④Zokoma Cooperative 41名(Chanluto, Mangochi県:原材料供給担当)

⑤Madisi Cooperative 254名(Madisi, Dowa県:原材料供給担当)

間接的な裨益者:総数18,082名

①直接的な裨益者の同一生計家族(一世帯あたりの人数は平均値を採用し7名で計算) 8,238名

②マンゴチ県内の直接裨益者以外でバオバブの実や種を供給する農民(300名)とその同一生計家族 2,100名

③マラウイのOVOPプロジェクトに加盟する組合に所属するメンバー総数 7,744名(直接的な裨益者数にカウントされている人数を除く)

【事業内容】

1年次
組合運営能力の強化 各組合に対して、年間事業計画の作成、帳簿管理、原価計算、5S改善、SWOT分析などについての研修を実施。
バオバブ商品製造に向けた環境整備 Malusoへの工場建設、及び搾油機の設置。各組合へのバオバブオイル、またはパウダーの製造資材の供与。製造研修の実施。
バオバブ商品の市場調査 Lilongwe市とBlantyre市での市場調査。International Trade FairやNational Agriculture Fairなど事業関連イベントの視察。
組合活動のフォロー 年間事業計画の作成、定期的な組合活動のモニタリングと指導。
その他 Malusoへの工場、及び搾油機の引き渡し式の実施。日本の国会議員マラウイ視察、及びJICA教師海外研修のODA活動現場視察の受け入れ。
帳簿管理研修でのグループワークの様子。基本的に研修では可能な限り参加型ワークを導入して実施。
当プロジェクトによって供与した搾油機でバオバブオイルを製造する組合員。
National Agriculture Fair(産業貿易観光省ブース)にて、来場者にバオバブオイルの説明を行う組合員。
保管庫&搾油機引き渡し式@Maluso Unionでの集合写真。写真後方部に見える建物がSPJ供与の工場。
2年次
バオバブ商品の製造技術改善 衛生管理、及びMBS(マラウイ商品安全基準、日本で言うJISである)研修、搾油機メンテナンス実習の実施。MBSに沿った製造マニュアルの作成。LOT管理システムと出荷前の官能チェック(人の五感を使った品質検査)の導入。日本でのバオバブオイル・パウダーの成分検査、及び細菌検査。
バオバブ商品の品質向上 バオバブオイルの効果を測るテストモニタリングの実施。消費者、関連業者へのスキン(ヘア)ケアに対する実態調査、及びマーケティング調査。商品パッケージ・ラベルの変更。新商品開発。
原材料供給担当組合と商品製造販売担当組合のバリューチェーン構築 原材料供給担当組合、及び周辺の近隣住民より、バオバブパウダー約1t、バオバブの種(オイルの原材料)約5.6tを商品製造販売担当組合に販売。
バオバブ商品の市場開拓 専門家を招聘してのプロモーション実習(Lilongwe市、Blantyre市にて延べ430店舗への営業活動)。都市部ショッピングセンターでの商品PRブース出展。International Trade Fairへの参加。
組合活動のフォロー 年間事業計画の作成、定期的な組合活動のモニタリングと指導。
その他 農業省、コミュニティ省の県事務所との事業連携協議。マラウイ大統領夫人へのバオバブ商品サンプル贈呈。TAや村長ら地域有力者を招待しての組合活動成果報告会の実施。
Blantyre市内ショッピングセンターでの消費者実態調査。買い物客に普段使用しているスキンケア用品の種類と金額などを聞き取っている。
Mangochi県の原材料供給担当組合でのバオバブ種の買い付けの様子。
Lilongwe市内でのプロモーション実習。市内の薬局に対してバオバブパウダーの営業を行う組合員と専門家。
原材料供給担当組合にて、TAや村長らを招いての組合活動成果報告会を実施。ゲスト、参加者に挨拶をするSPJ現地事業責任者。
3年次
バオバブ商品の品質向上 原材料調達から出荷までの作業工程のロット管理。MBSの取得支援。衛生管理フォローアップ研修の実施。新商品開発。
バオバブ商品の市場開拓 Flagship店舗の獲得に向けたプロモーション活動。市内ショッピングセンターでの商品PRブース出展。International Trade FairとNational Agriculture Fairへの参加。
組合活動のフォロー 四半期毎のBusiness Review Meetingの実施。
衛生管理フォローアップ研修。MBS基準の衛生管理を順守してバオバブジャムのパッキングを行う組合員。
リロングウェ市内で獲得したFlagship店舗(カフェ)。新たにバオバブオリジナルドリンクがメニューに加わった。
Lilongwe市内ショッピングセンターでのバオバブ商品PRブース出店。
Business Review Meetingの様子。四半期の売上と製造量を確認し、年間事業目標を達成するために何が必要かを協議している。

【3年間を通しての事業成果】

  • バオバブ商品の製造に対する衛生管理と商品品質の向上

 原材料供給担当組合、及び製造販売担当組合においてMBS(マラウイ商品安全基準)を基準とした製造、衛生管理がなされる様になった。これまで3年間の事業で2回実施した日本での成分検査及び細菌検査の結果では、2回目は1回目と比較してその数値が改善され、原材料供給担当組合(2組合分)が製造したバオバブパウダーは日本の食品衛生法における生菌数の厳しい基準(3000/g以下)をクリアした。また、製造販売担当組合が製造したバオバブオイル(2組合分)についても、日本の化粧品基準に沿って、ホルムアルデヒドなどの禁止成分が含まれておらず、生菌数が基準値(1×103 CFU/g)以下であることが確認された。

 バオバブオイルのMBS取得については、Home Oils CooperativeとMaluso Unionがプレ認証を取得し、現在、本認証の審査中である。本認証の審査には、今後さらに1年から2年が必要となる。

  • マラウイ国内におけるバオバブ市場の拡大

これまでの延べ400件以上のバオバブ商品の営業活動、Flagship店舗獲得に向けたプロモーションなどの活動によって、マラウイ国内におけるバオバブ商品の販売市場は大きく拡大した。とりわけバオバブパウダーにおいては、その売上市場は3年前と比べて5倍以上へと成長し、具体的な数値として、これまでに以下の新規販売店舗を獲得した。

【Lilongwe市内】24件

ショップ:7件、美容室:1件、薬局:3件、スパ:2件、カフェ:4件、お土産屋【ギャラリー】:5件、スポーツジム:1件、外国企業:1件

【Blantyre市内】16件

ショップ:3件、美容室:3件、理髪店:1件、薬局:5件、スパ:2件、カフェ:1件、現地NGO:1件(栄養改善プロジェクトで使用)

③支援組合の事業収益の増加

支援組合(5組合)におけるバオバブ商品販売の売上合計は、事業開始時から2年半で約116万円から約268万円へと増加した。また、元々各組合がそれぞれ製造販売していた既存商品(コメやハチミツなど)についても新たに市場を開拓し、この2年半におけるバオバブ商品やその他の既存商品を含む支援組合の売上合計は、約750万円から約1,765万円へと増加した。

  • バオバブ事業、及び組合活動を通しての農民(組合員)の生活環境の向上

事業完了時に実施した事業成果調査において、調査対象となった325名中234名(72%)が組合活動によって得た収益を個人事業(販売用野菜-米を含む-の栽培、販売用家畜の飼育、パン類などの製造販売、キヨスクの運営など)に投資しており、また325名中301 名(93%)が組合活動、またはその収益を活用しての自己投資事業によって、自身及び家族の生活が向上したと回答した。収益の活用方法(個人事業への投資を除く)について、多く出た回答は以下の通りであった。

・子供の学費の支払いや学校へ通うために必要な備品の購入に際して、親族などから借用せずに対応できる様になった。

・自転車やマットレス、携帯電話、ラジオなど生活用品を購入した。

・食事に肉や魚を出す回数が増えた。

・家の修繕をした(藁葺からトタン屋根への張替え、ドアの設置、室内のセメント塗りなど)。

・食用や資産としての家畜(鳥、ヤギ、豚など)の飼育。

【今後の課題・展望】

MBSの取得については、本プロジェクト実施期間内に本認証の取得は完了できなかったが、既に主管省庁である産業貿易観光省の担当部署に引き継ぎ済みである。また、この3年間でバオバブ事業をある程度軌道に乗せることに成功したため、現時点ではプロジェクト終了後も自立した組合活動が展開され、当プロジェクトによって構築されたネットワークが維持されることが期待できる。国連のグローバルコンパクトに加入しているニューヨークの化粧品会社が、彼らのバオバブオイルを使ったシャンプー・コンディショナーを製造するようにもなっている。今後の懸念事項を挙げるとすれば、衛生管理がきちんと彼らだけで順守されるかどうか、原材料供給組合に替わる競合他社の出現によってネットワークが崩れる可能性、及び同組合のモチベーションや活動の低下、バオバブ商品市場への大手企業の参入による影響などが特に考えられる。事業終了後も各組合活動の経過観察を定期的行う予定であるが、今後、組合が自立した活動を展開できていることが確認された場合、さらに当事業を発展させた継続案件、もしくは別商品(別基盤)を用いての類似案件の形成が検討できる。(了)

約3年間に亘り、日本、またマラウイで事業に関わって下さった関係者の皆様、ご支援いただいた皆様のお力によって、今回の事業を無事に完了することができました。SPJはこれからも途上国での開発支援を続け、SDGsの達成に向けた活動を展開していきます。

今後とも、ご支援をよろしくお願い致します。


「バオバブ製品の製造販売を通した農民の自立支援 in Malawi」事業最終報告会を開催しました!

外務省の「日本NGO連携無償資金協力」のもと、バオバブの種子からオイルを、果実からパウダーを製造し、マラウイの都市部で販売する事業も、早いもので12月4日に3年間の事業期間を終了しました。27日の報告会では、3年間事業を担当・統括してきた現地駐在員の青木から、これまでの事業の歩みを説明しました。

まず、製造を軌道に乗せること、農民の皆さんにビジネストレーニングを実施することに注力した1年次を経て、2年次、3年次は衛生管理の徹底、製品の品質向上、店舗を対象にしたマーケティング調査と販路開拓、バリューチェーン(原材料供給を担当する農業組合と、製造販売を担当する農業組合のネットワーク)の構築を重視した活動を行いました。こうした活動と努力が実り、おかげさまでマラウイ国内でバオバブ製品の市場は大きく拡大しました。事業成果調査では、農民の93%が組合活動、またはその収益を活用した自己投資事業によって、自身及び家族の生活が向上したと回答したそうです。

今後、農民だけで衛生・品質管理がきちんと順守されるか、バオバブ製品の人気の高まりを受け大手企業が市場に参入した場合、どのように対応すべきか、などの課題については、これまでの人的ネットワークを基盤に、各組合活動の進捗、経過を定期的に見守っていきたい、との青木の抱負が語られました。

最後に当事業開始当時からご指導頂いていた西岡前マラウイ大使からあたたかいお言葉をいただいて、報告会は無事終了しました。

事業は終了しましたが、SPJはこれからもバオバブ製品を応援してまいります!


ウガンダ南スーダン難民心理社会的支援が終了しました!

SDGs・プロミス・ジャパン(SPJ)ではジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成金を受け、6/11~9/25の間ウガンダ北部ビディビディ難民居住区において南スーダン難民への心理社会的支援を行いました。

ウガンダ北部の支援現場では様々な苦労がありましたが、皆様の応援のおかげで紛争のトラウマを抱える難民の方々に何とか支援を届けることが出来ました。

本事業では、まず柱となる活動として小学生向けのワークショップを行いました。ビディビディ居住区内のAlaba小学校とMengo小学校から各32名ずつの生徒を選出して、全10回のワークショップを実施したのです。ワークショップでは様々な表現方法を通して子ども達の記憶を形に表現していきます。はじめは絵画(2次元)、次に粘土や針金(3次元)、最後には音楽(4次元)と回を重ねる毎に複雑な表現方法を用いることで、子ども達はそれぞれの感情や記憶と向き合います。初回の絵画セッションでは「失ったもの/こと」をテーマとして絵を書いてもらったので、どの子どもも大切な肉親を失った悲しみを絵に表現していました。また「忘れられないあの日」というテーマでは、銃を向けられた光景、親が目の前で殺される様子、など、私たちが想像もつかない出来事を体験してきた子どもの心の内を垣間見ることとなりました。

絵画セッションの一コマ。「忘れられないあの日」をテーマにそれぞれの思いを絵にします。
描いた作品についてそれぞれ皆の前で発表します。
作品の一部
粘土セッションで作成された作品。棺桶の色が非常に印象的です。
ちなみに「好きなもの/こと」をテーマに描いてもらうと
日本の子どもたちと変わらないような絵が見られます。
粘土セッションで作成された作品。棺桶の色が非常に印象的です。

針金セッションでは自分の過去を振り返りつつ、未来に向けての希望を示します。

針金の最後の部分は明るい将来に向かって、数センチほど上向きに残しています。

針金をもって発表する男の子。小学生には見えませんが、現地では18歳でも小学校に通う子どもたちも少なくありません。

​ワークショップの後半は、過去の記憶から未来へとテーマが移ります。ジオラマセッションでは将来に住みたい町をグループで作成しました。多くの作品が平和になった南スーダンの未来を表現しており、彼らにとって南スーダンは、悲しい記憶の場所であると同時に楽しい思い出の残る故郷であり、いずれは戻ることができる未来を望む場所であることが強く感じられました。また、前半のセッションまではずっと暗い表情をしていた子どもが、初めて子どもらしい笑顔を見せ、ジェット機つきの自分の家を自慢している姿を見て、私たちも明るい気持ちをもつことができました。

ジオラマセッションでの作品。子ども達の将来への夢が目一杯詰め込まれています。

今回の事業のクライマックスは、終盤の音楽セッションで、子ども達はグループに分かれて「過去」「現在」「未来」の歌詞を作りました。それをメロディーに乗せて1番「過去」、2番「現在」、3番「未来」として歌います。この音楽セッションには日本人専門家である桑山紀彦医師が加わり、子ども達の歌詞づくりをファシリテートし、演奏の場面ではギターの伴奏も行いました。1番の「過去」の歌詞では、暗い記憶が歌われ、2番の「現在」では難民居住区内での安定した生活、3番の「未来」では美しい南スーダンの故郷や将来の夢が語られ、子ども達の繰り返し歌う大きな歌声に、見学に来ていた親や教師たちも引き込まれていきました。この音楽セッションの時期には、SPJ理事長・鈴木が活動地を訪問し、子ども達と一緒に歌詞を作ったり演奏を行ったりしました。また、在ウガンダ日本大使館の亀田大使にもプロジェクトをご訪問いただき、子ども達に大きなエールを送ってくださいました。

音楽セッションの様子。笑顔で歌ってくれました。
SPJ理事長・鈴木が子どもの歌詞作りに参加している様子
音楽セッションに加わる亀田大使(中央)と日本人専門家桑山医師(右)

また、今回の活動では子ども達の親や学校の教師を対象とした、心理社会的ケアに関するワークショップも実施しました。子ども達にとって多くの時間を過ごす学校や家庭生活において、周囲の大人達がいかに子ども達の様子に気づいて適切な対処ができるか、ということも子ども達の心理状況に影響を与える大きな要素となります。そのため、保護者や学校の教師に対するワークショップの内容は、精神的に不安定な子どもにはどのようなケアが必要か、という基礎知識の提供が主となりました。保護者や教師達からは多くの質問が寄せられ、約5時間にも及ぶ長時間のワークショップにも関わらず、最後まで熱心にメモを取る教師達の姿が印象的でした。

教員向けワークショップの様子。実は教師たちも今まで表に出せなかった様々な辛い想いを抱えていたことがわかりました。

【終わりに】

子ども達の心理状態には戦争によるトラウマの他にも、避難後の新しい生活に基づく様々な不安要素が含まれており、そう簡単に解決するものではありません。しかし、少なくとも当初は言葉が少なく凍った表情をしていた子ども達が、ワークショップ後半になると笑顔を見せてスタッフと作業をするようになっていたことは私たちにとって確かな手ごたえでした。また、親からは「子どもが家で過去の話をするようになった」「学校での出来事はあまり話さないのに、ワークショップでの出来事はよく話している」など、家庭内での前向きな変化を報告する声が複数聞かれました。

教師対象のセミナーやワークショップでは、「このような支援は今までなかった」「もっと長いセッションでの研修を行って欲しい」「コミュニティリーダーを対象とした活動を行って欲しい」など様々な要望が挙げられ、改めて心理社会的ケアに関する支援ニーズの高さを実感する事となりました。

最後に、自分たちの父親や母親が目の前で殺された過去を変えることはできません。でも、これからどう生きるかを決めることは出来るはずです。

ワークショップに参加した子ども達には、トラウマに押しつぶされず前向きな人生を歩んでもらえる事を心から願っています。

今回の事業(6月15日~9月25日)では、子ども64名、保護者61名、教師202名に対して活動を行うことができました。また、昨年の事業対象校の子ども達計47名を対象とした特別ワークショップも1日だけ実施することが出来ました。おかげさまで昨年度事業を行った子ども達の元気な姿を再度見ることが出来、嬉しく思いまた勇気づけられました。このような活動を実施できたのも、皆さまの温かいご支援のお陰です。改めてこの場をお借りして心より感謝申し上げます。今回の支援の様子は下記URLにてより詳しく映像化されています。ぜひご覧くださいませ。

教師方との一枚。皆様の熱意が本当に印象的でした。
子ども達に「どのセッションが一番楽しかったか」と聞くと声を揃えて「Singing!」と答えました。最後には子供らしい笑顔をたくさん見る事ができました。

このプロジェクトは一旦終了しますが、これからもSPJはウガンダ北部でトラウマを抱えた南スーダン難民の方々に支援を届けたいと考えております。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします!


【マラウイバオバブ事業】プロジェクトの事業成果調査を実施しました

 2年9カ月に渡って実施されてきた「バオバブ製品の製造販売を通じた農民グループの自立支援プロジェクト」もいよいよ終わりに近づきました。プロジェクト終了に伴い、今月はプロジェクトの対象となっていた農民グループに対し、事業成果調査を実施しました。

 この調査では、プロジェクトの直接的な裨益者合計1,373人の内、無作為抽出した約300人に対して、主に以下の3つについて調査しました。

①プロジェクトを通して何を学んだのか?さらにその修得したノウハウを活用して、組合の活動を促進することができたのか?

②組合活動における組合員の収入はどのぐらい向上したのか?

③組合活動を通して得た収入を活用して、どのように生活が改善されたのか?

 マラウイでは、世界銀行が定める貧困ラインである、1日1.90米ドル以下で生活する人の割合は50.7%にのぼり、国民の80%以上が農業により生計を立てています。その農業も1年に約4カ月間ある雨季の時期にのみ行うことができ、それ以外は仕事や収入がなくなる農家も多くいます。

 今回のプロジェクトを通し、製造業ビジネスに必要なノウハウとして、会計帳簿のつけ方や、衛生管理・在庫管理の方法、商品マーケティングの仕方、新商品開発の方法など、様々なトレーニングから新しい知識や技術を身につけることができた農民グループのメンバーの中には、組合活動だけでなく、組合活動で得た収益を元手に小規模な個人事業(販売用の米や野菜の栽培、販売用家畜の飼育、パンや揚げドーナツの製造販売など)に投資して、その収益を増やしている人も多くいました。

 事業を開始したこの約2年半で、バオバブ製品の販売市場は大きく拡大し、支援グループにおけるバオバブ製品の売り上げは約2.5倍増となりました。その結果、生活が改善されたと回答した人が90%を超え、実際にどの様に生活が変わったのかを嬉しそうに話す組合員の姿に、私たちも思わず目頭が熱くなり、自分たちがやってきたことがきちんと成果となって表れていることを実感でき、本当に嬉しく思いました。

ここで、実際に組合員の声を紹介したいと思います。

「これまでは、半年に一回、5人の子供の学費を支払う際には、親族たちからお金を借りなければ準備できなかったけれど、今では誰からも借りることなく子供たちの学費を払える様になったわ。(50代・女性)」

「今まで、組合のある工場まで来るのに片道1時間半を歩いて来ていたけれど、自転車を買えたことで、工場へ通うのが本当に楽になったよ。(40代・男性)」

「これまでは御座に布を敷いて寝ていたけど、初めてマットレスを買って、その気持ち良さに驚いたの。いつもなら日が明けると自然と目が覚めていたのに、あまりの気持ち良さに初めて寝過ごしたわ。身体も楽だし、本当に快適に寝れるって幸せね。(30代・女性)」

他にも、食卓に肉や魚が出る回数が増えた、新しい携帯電話やラジオを買った、家の屋根を藁葺からトタン屋根に変えたなど、皆さん着実に自分たちの生活の質を向上させていました。

今回の事業成果調査ではマラウイの北から南まで多くの農民グループを訪問しましたが、グループに到着すると、その多くが私たちをアカペラの歌とダンスで歓迎してくれたり、帰りには自分たちのグループで作った商品をお土産として持たせてくれたりと、“Warm Heart of Africa”と呼ばれるマラウイ人の温かさや陽気さを感じる機会が多くありました。彼らが当プロジェクトを受け入れ、感謝の気持ちを持ってくれていたことが、私たちSPJとしても本当に嬉しく、改めて開発支援の重要性や意義を感じました。

このプロジェクトは農民グループの自立を目的としており、今後は彼らの自助努力でグループ活動が運営されることが求められます。プロジェクトが終了しても、彼ら自身の力で、より一層グループが発展していくことを期待する一方で、こんなにも温かくて陽気な人たちともう時間を共にすることができないと思うと、少し寂しい気持ちにもなりました。これからも彼らの活躍に期待をしたいと思います。

組合に対して最後の挨拶を行う駐在員・青木(右)
アンケート調査用紙を記入する組合員たち

【マラウイバオバブ事業】リロングウェ市内ショッピングモールでの商品プロモーション・ブース出展

今回は、9月7日(土)から8日(日)の2日間に渡り、マラウイの首都リロングウェのショッピングモールで実施した、バオバブ製品販売促進のためのブース出展についてご紹介します。

SPJではバオバブ製品の製造サポートや衛生管理指導の他、プロジェクト終了後も製造組合の自助努力でビジネスが継続できる様に、販路開拓や営業活動のサポートも行なっています。今回はその営業活動の一環として、商品のプロモーションと販路拡大を目的に、ショッピングモール入口にブースを出展しました。

マラウイにもショッピングモールと呼ばれる施設がいくつかありますが、私たち日本人が想像するような大規模な施設ではありません。今回ブースを出展したGateway Mallは、リロングウェに2014年12月にできたマラウイで一番大きなショッピングモールです。

このモールには衣料品、電化製品、家具、日用雑貨を販売する店舗や、銀行、美容室、レストラン、バー、そして南アフリカ資本のスーパーマーケットなど、大小約30の店舗が軒を連ねており、休日になると多くの人で賑わいます。

ブース出展を行なったGateway Mall

今回、モールに訪れた買い物客が必ず通るモール入り口の開けたスペースにおいて、SPJで支援をしているバオバブパウダーやバオバブオイルに加え、2017年までJICAのプロジェクトで支援されていたOVOP(一村一品)商品を展示、販売しました。

ブース準備中のMaluso UnionのメンバーとSPJスタッフ
今回展示販売されたバオバブ商品とOVOP(一村一品)商品

バオバブフルーツはマラウイで一般的なフルーツとして親しまれており、市場に行くとバオバブジュースと呼ばれる水に溶かした物や、それを凍らせてアイスキャンディのようにしたものが1つ7円程で売られています。

バオバブフルーツ(白い部分がラクガンのような粉末状になっており、酸味があっておいしい)

しかしバオバブフルーツを粉末状にしたバオバブパウダーは、まだ一般にあまり馴染みがありません。興味はあっても使用用途がわからないという声も良く聞かれるため、今回バオバブミルクシェイクとしての新しい使い方を提案するため、ブースにミルクシェイクの試飲コーナーを設けました。ブースを訪れてくれた多くの方がミルクシェイクの試飲を通し、バオバブパウダーを購入してくれました。

バオバブミルクシェイクを試飲中のお客さんと商品を説明するMaluso Unionのメンバー

今回のブース出展は、商品営業・セールストーク研鑽のトレーニングも兼ねており、参加したメンバーは、どのように商品を展示し、どのように商品の特徴や使い方を説明すれば良いのかなど、戦略を持って考える必要がありました。初めは椅子に座り、ブースに来るお客さんを待っていただけのメンバーも、徐々に自信が付くにつれ、自らお客さんを呼び込み、積極的に営業する姿が見られました。

多くのお客さんで賑わうブース

この2日間、ブースを訪れてくれた方々からの反応や売り上げもよく、参加したメンバーからは毎日でもやりたいとの声や、次回はOVOPアンテナショップのチラシや、営業用の名刺も準備したいとの案が出てくるなど、学びの多い2日間となりました。


【マラウイバオバブ事業】Malawi International Trade Fair

今回は8月に実施されたInternational Trade Fairについてご紹介します。今年で31回目となる同フェアですが、昨年に引き続き、今年もSPJはブースを出展しました。期間は8月6日から15日までの10日間で海外から招かれた団体や、マラウイ国内の民間企業、現地NGOや国際NGOなど約190の団体がブースを出展しました。会場は室内と野外に分かれており、SPJ弊団体は野外ブースにて出展しました。

会場へのメインゲート
室内会場の様子
SPJのプロジェクトブース(外観)

今回、フェアに参加する目的は、組合商品の広報と販売促進、及び新たなビジネス取引の創出です。ブース内では、商品の展示販売を行い、ブースを訪れる人たちにバオバブ商品をはじめ、モリンガやハイビスカス、はちみつなどを紹介していきました。今回のフェア用に各商品の広報ツールや、サンプル配布用のバオバブパウダーを用意し、当ブースに足を運んでもらえるように工夫しました。

テーブルの上にディスプレイされるバオバブ商品

また、今回のフェア参加におけるもう一つのテーマとして、支援組合メンバーの商品セールストークの研鑽がありました。実際のフェア会場において、自分たちの商品について的確に説明し、他の類似商品と何が違うのか、何が特徴なのかを説明できる様になることは、とても重要です。

当プロジェクトでは2年次から、マラウイ国内におけるバオバブ商品の市場開拓の活動を進めていますが、2年次に実施した400件の店舗プロモーション実習の成果もあり、ブース訪問者からの質問にも、きちんと答えられるようになってきました。実際の成果例を以下にご紹介します。

ブース来場者:バオバブ石鹸は何にいいの?

ブーススタッフ:この石鹸はオリーブオイルの約12倍のビタミンEとカロテン、そして保湿効果のある脂肪酸を多く含むバオバブオイル100%で作られています。ビタミンEとカロテンは保湿効果のある脂肪酸も多く含んでいるので、お肌をしっとりと健康な状態に保つことが期待できます。

ブース来場者:バオバブオイルとモリンガオイルの違いは?

ブーススタッフ:どちらもビタミンや複数の脂肪酸など様々な栄養素を含んだオイルですが、一番の違いはオイルの質感です。バオバブオイルは塗った後、肌内に浸透していきますが、モリンガオイルはバオバブオイルよりも少し粘着性が強く、塗った後に肌上に残る感じです。メイク前の下地に使うならバオバブオイル、マッサージなどを目的に使う場合にはモリンガの方が使いやすいかもしれません。

1年半前には、バオバブオイルについて、皮膚がんが治る、アトピーが消えるなど、根拠のない過大宣伝をしがちな状況でしたが、今ではビタミンの豊富さや保湿力が高い理由をきちんとデータや証拠と共に説明できるようになり、確実な成長を確認することができました。

バオバブ石鹸の特徴について説明するメンバー
来場者をきちんと確認して、バオバブオイルのコアターゲットである、おしゃれや美容に敏感な
若者女性にバオバブオイルを勧めています。
多くの人が当ブースに足を止めてくれました。

今回、マラウイ大統領選挙後のデモの影響により、昨年と比べてフェアへの来場者数が少なかったという課題はありましたが、ブース訪問者1人1人にきちんと声をかけて、丁寧に商品広報をするメンバーの姿が確認できました。自分たちのビジネスに対してプライドを持って対応できるようになってきたことを大変嬉しく思いました。


【OVOPショップの改装】

今月は、6月に実施したOVOPショップの改装についてご紹介します。

まず初めに「OVOP」って何?という人のために、簡単にOVOPについてご説明します。

私たちは現在、5つの農業組合に対してバオバブを使った農産品ビジネスの促進を支援していますが、その全ての組合はOVOPプロジェクト(One Village One Product Programme:一村一品プロジェクト)によって作られた約100の組合の中から選ばれています。OVOPプロジェクトとは、日本の大分県が発祥の「一村一品運動」をモデルとした農村開発のプロジェクトで、マラウイ政府の産業貿易観光省が2003年から実施しており、JICAも2017年まで技術支援をしていました。

具体的には、各農村地域などで取れる特産物を活かして、市域振興につなげようという事業です。例えば、バナナがたくさん取れる地域において、ただバナナを販売していくだけでなく、売りさばけずに傷んだり、捨てられてしまったりするバナナをバナナワインに加工して販売するなど、商品加工、高付加価値化という側面が強いのも特徴です。

SPJのバオバブプロジェクトは、そのようなOVOPプロジェクトで作られた基盤を活かして、産業貿易観光省と連携して実施しているのですが、私たちが支援している組合の1つにはMaluso Cooperative Unionがあります。この組合は、先ほどお伝えしたOVOPプロジェクトで作られた約100の農業組合の上位組織で、マラウイ国内におけるOVOP商品の市場開拓や、都市部にある直営店舗(これがOVOPショップ)の運営、輸出対応などを担当しています。

今回は、Maluso Cooperative Unionが運営するOVOPショップ(日本でいう各県の地域産品を販売するアンテナショップを想像して頂ければ分かりやすいかと思います)の改装を実施しました。 まず、これまでのOVOPショップを見てみると、最初はJICA(日本人)の支援も入っていたこともあり、店内には広告ポスターが掲示され、パンフレットスタントが設置されているなど、OVOP商品のアンテナショップとしての役割を果たしていたことがわかります。

開店当時のOVOPショップ(2012年頃の写真)

続いて、改装前の状態がこちらです。実は、このショップがテナントに入っている建物が昨年にリノベーションを実施し、半年程お店を開け渡す必要があったため、その間はその建物前の敷地で毎日、ブース出展の様な形でショップを運営していました。しかし、実店舗に戻った後も、以下の写真を見ると分かる様に、広告ポスターなどがほとんどなくなり、せっかく商品を置く棚や机などがあるのに、それがそのまま放置されているといった、ただ商品が雑然と並べられているだけの、とても閑散とした雰囲気になっていました。


リノベーション前のショップの内観

そこで、今回は商品をただ並べるだけでなく、入店したお客さんに商品の魅力を見せることができる様に店内のレイアウトを改善しようとショップの改装を手伝いました。実際に改装した店舗の様子をご覧いただきましょう!!

①店舗入り口


まず、「OVOPショップ」という名前だけでは、実際に何を売っているお店なのかが分かりにくかったため、カウンターを入り口付近に配置し、外からも見える入り口には、販売している商品がパッと分かる様に、サンプル棚を持ってきました。これで、この店はハチミツやお米、ハイビスカスティーなど食料品をメインで販売していることが分かります。また、店舗の外にもスタンドを設置し、主な商品ラインナップを掲示する様にしました。

②商品棚のデコレーション

続いて、ショップの売れ筋商品であるバオバブオイルやバオバブパウダー、モリンガ石鹸などを1つにまとめて、Malusoの倉庫に眠っていた、アフリカのカラフルな布(チテンジ)や籠細工の入れ物などを活用して、魅せるディスプレイを意識したレイアウトに改善しました。また、商品の傍には、商品紹介のポスターなども設置し、商品の効果や使い方を簡単に説明できる様になりました。

また、それぞれの商品ごとに値段と商品名を記載した商品プレートも作成し、一目で値段が分かる様にしました。

③商品の強みを押し出す商品広報媒体

OVOPショップの人気商品の一つに全国各地の農業組合から集められるハチミツがあるのですが、せっかく8種類もの豊富なバラエティがそろっているのに、ただ一色単に並べて販売しているだけでした。そこで、現在取り扱っている8種類のハチミツが、どの地域で取れたもので、どんな木々や花の蜜から採取されたものなのか、味や香りがどう違うのかなどの特徴をまとめた広報ポスターを作成しました。お客さんに選ぶ楽しさを与えることで、味比べや、自分のお気に入りハチミツ探しなどの楽しみも増え、全国各地から集まったバラエティ豊富なハチミツの魅力を引き出すことができます。

④店舗全体

最後に全体として、店の運営に必要ない、無駄なものを排除し、OVOPプロジェクトや商品一覧などの広報ポスターを店内に掲示することで、店内への動線をスムーズにし、すっきりと商品を見せられるように改善しました。

この改装が、実際に売り上げの増加にどれほど影響を与えるのかが分かるのは、まだこれからですが、とりあえず、常連客の皆さんからは「店内がオシャレになった。」「他のハチミツも試してみたくなった。」など前向きなコメントが多く寄せられているとのことです。今回の改装で全て完了ではなく、今後もさらに良いアイディアを取り入れて行き、商品の売れ行きや店舗を訪問する客足の増加を目指して行きたいと思います。

【店舗情報】

OVOP SHOP
場所:Area3、県庁オフィスの道を挟んで向かい側
営業時間:平日(8:30~17:00)
     土曜日(8:30~13:00)
     日曜日・祝日(休業日)


【マラウイのバオバブ市場をどうやって広げていくか?】

今月は、現在取り組んでいる、現地でのバオバブ商品の市場開拓の活動について紹介します。

 

バオバブは欧米などではスーパーフルーツとして認知されていますが、実際にそのバオバブが自生しているマラウイでは、バオバブの存在は知っていても、バオバブが高い栄養素を持っていることや、バオバブオイルに保湿効果があることはあまり認知されていません。

 

バオバブ商品の市場を開拓するにはまず、バオバブ製品の商品価値の認知向上も大事な要素の一つです。マラウイ政府は「Buy Malawi」をスローガンに国産品の国内消費を推進していますが、スーパーマーケットなどで売られている加工品の多くは輸入品で、特にスキンケア用品などは、UnileverやNIVEAなど日本でも良く知られている商品がシェアを占めています。

当プロジェクトでは、「Buy Malawi」を促進するために、マラウイ産のバオバブオイルを日々のスキンケアやヘアケアに使用してもらうべく、バオバブ商品の認知向上や市場を拡大すべく活動を進めています。

(Buy Malawiについて詳しく知りたい方はHPをご覧下さい。)http://www.buymalawi.mw/

 

今回は、5月から6月にかけてマラウイの2大都市・リロングウェとブランタイヤにおいて実施した「マーケティング実習」について報告します。この実習はバオバブオイルとバオバブパウダーの認知度の向上と取り扱い店舗を増やすことを目的に、マラウイ人と日本人のマーケティングの専門家を1名ずつ招いて実施しました。初めに、専門家より営業活動に関するノウハウを参加者であるMaluso Cooperative Union5名(リロングウェ)、Home Oils Cooperative8名(ブランタイヤ)に講義してもらい、その後、実際に専門家と参加者で市内の美容院や化粧品販売店、薬局など延べ約400店舗にバオバブ商品の営業活動を行うというものでした。

 

○実習1日目(事前講習会)

専門家より市場調査の目的や方法をレクチャーしてもらい、市場のニーズを把握し、そのニーズを満たすための商品作り、コンセプト作りの重要性を学びました。

 

リロングウェの支援対象組合での講習会
リロングウェの支援対象組合での講習会

 

○実習2~4日目(市場調査)

専門家、組合メンバー、MPJスタッフと共に、市内においてバオバブ商品を販売できる可能性の高い店舗を、立地や客層などを確認しながら探しました。そして、実際に営業をかける店舗をオイル、パウダーそれぞれ100店舗ずつ選定しました。バオバブオイルの営業先は、美容院や化粧品店、薬局、マッサージサロンなど、バオバブパウダーは、薬局や食料品店、スーパーマーケット、レストランなどを中心に店舗を選定しました。

 

 

6月マラウイ2
とにかく足を使って、実際の店舗の様子をチェックしていきます。

女性用の洋服店や化粧品店、美容院などが並ぶ、ブランタイヤのファッションストリート
女性用の洋服店や化粧品店、美容院などが並ぶ、ブランタイヤのファッションストリート

 

○実習5~10日目(プロモーション活動)

その後、選定した200店舗を1つずつ営業訪問し、実際にバオバブ商品のプロモーション活動を行いました。店舗のオーナーやスタッフに対してバオバブ商品の説明を行い、商品サンプルやチラシを配布して、店舗で取り扱ってもらえる様に依頼しました。

6月マラウイ4
毎朝のミーティング。商品のセールストークの内容などについて確認します。

 

化粧品店のオーナーにバオバブオイルの効果を説明する組合メンバー
化粧品店のオーナーにバオバブオイルの効果を説明する組合メンバー

個人経営のスーパーマーケットにバオバブパウダーをPRする専門家と組合メンバー
個人経営のスーパーマーケットにバオバブパウダーをPRする専門家と組合メンバー

 

○実習11日目(振り返りミーティング)

最後に、これまでの10日間の活動を振り返り、実際にプロモーション活動を通しての店舗の反応や興味の高さなどによって、今後フォローアップしていくべき店舗に優先順位を付けていきました。また、この実習で何を学んだか、今後、事業を展開していく上での課題は何かについてメンバーみんなで共有しました。

ブランタイヤの支援組合での振り返りミーティング
ブランタイヤの支援組合での振り返りミーティング

 

今回の実習による新規販売店舗の獲得目標数は1割の40店舗。これまでに9店舗の新規顧客を獲得し、現在もフォローアップ活動を継続中です。この目標は決して簡単なものではありませんが、引き続き、一歩ずつ着実にマラウイ国内におけるバオバブ商品の市場拡大を目指します。

 

 

 


(マラウイ農民グループ支援事業)バオバブパウダー製造に密着!

今回はバオバブの実から作られる栄養価が豊富なスーパーフード、バオバブパウダー製造の様子についてご紹介します。全ての工程を手作業で行なうため、時間と労力はかかりますが、道具さえあれば電気の通っていない村でも簡単に製造することができます。またバオバブパウダー製造後には残った種をバオバブオイルやバオバブジャムの製造にも活用することができ、農民の人々の更なる収入向上へと繋がります。

 

~準備するもの~

バオバブフルーツ、ビニールシート、臼と杵、平たいバケツⒶ、中バケツⒷ・Ⓒ、大バケツⒹ、粉振るい器Ⓔ・Ⓕ(Ⓔよりも網目の細かいもの)

バオバブフルーツ
バオバブフルーツ

臼と杵
臼と杵

粉振るい機C
粉振るい機C

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~バオバブパウダー製造の流れ~

(0) 使用する道具を布で拭いてきれいにする

(1) ビニールシートを敷き、場所を確保する

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(2) シートの上にバオバブフルーツ(バオバブの実)を広げ、殻や繊維などを取り除き、平たいバケツにまとめる

image12

 

 

(3) 平たいバケツから臼に適量(容量の1/3程度)のバオバブフルーツを入れ、杵で砕く image16  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(4) フルーツの中の種が見えてくる程度に砕けたら中バケツAへ移し替える

(5) 中バケツAの中身を粉振るい器Cで大バケツへ振るいかける image20

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(6) 大バケツの中身を中バケツBへ移し替える

(7) 中バケツBの中身を網目の細かい粉振るい器Dで再度振るい、大バケツへ image22

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(8) 出来上がったパウダーを詰めて完成!

image24

 

 

 

バオバブパウダーはビタミンCがレモンの3倍、カルシウムが牛乳の3倍、鉄分がほうれん草の3倍、食物繊維がバナナの50倍、ポリフェノールがアサイーの2倍含まれるなど、栄養価が非常に高い食品です。美肌効果、アンチエイジング、デトックス効果、貧血防止、ダイエット効果、腸内環境を整える、骨を健康に保つ、などの効果が期待できると言われており、スーパーフードとして欧米ではすでに注目を浴びています。 マラウイでは昔からジュースやアイスなどにしてよく食べられており、日本でもブームの兆しか感じられるよう注目の食材です!